幼なじみたち(※全員美形)に婚カツを邪魔されるので困っています
 同じテーブルの私以外のメンバーの視線が私の背後に集中するなか、私はどうしても後ろを振り向くことができなかった。

(ひぃぃぃ! 怒ってる! この声は絶対怒ってるっ!!)

詩音(しおん)兄さん。なっちゃんの鞄とコート回収したよ」

 後ろに立つ人物とは別の種類の涼やかな美声が私の荷物と共に登場し、掴まれたままだった右手とは逆の左手首を掴んだ。

 右に左に。今日一緒に合コンをする予定だった女性たちの視線が面白いほど移動する。

 それはそうだろう。今、私の後ろにはタイプの違う洋風の美形と和風の美形(しかも二人とも身長180センチオーバー)が並んで立っているのだから。

(あああぁマツモトさんごめんなさい。女の子たちがこの二人を見ちゃったら、今日の合コンの成功はきっと無理)

「んじゃ、帰るぞ。あ、迷惑かけた詫びにここでの飲み代は俺らに請求するように店側には言っといたから。遠慮なく飲んで帰って」

「ちょうどこのお店はうちの子会社の系列だったので。だから心配しないでくださいね」


 決戦の金曜日の夜。私の結婚相手探しを賭けた合コンは、乾杯する前にこうして幕を閉じた。


 まるで確保された宇宙人のように両手首をそれぞれ掴まれて、居酒屋の外へと連行される。
 繁華街にある雑居ビルのエレベーターを降りると、目の前の道路にこんなごみごみした場所には普段絶対停まらないであろう超高級車が私を待っていた。

「なつみちゃん、お酒が飲みたかったんだったら、言ってくれればホテルのバーでも料亭でもいくらでも貸し切りにしたのに」

 言いながら運転席から降りてきたのは──

「鷹ちゃん……」

 私の両手首を掴む二人の長兄、三条鷹嗣(さんじょうたかつぐ)だった。

「運転手さんじゃなくて鷹ちゃんが運転してきたの?」

「今回は俺達三人だけの方が都合が良いと思ったからね」

「? それってどういう……」

「ほら、話は車ん中でするぞ。お前のミニスカート姿、他の野郎に見せるのムカつく」

 そう言って右手を引っ張るのは三条家次男の詩音。詩音は私と同い年だからか他の二人に比べて一番遠慮がない。

「それに寒いしね。ね、だから乗って? なっちゃん」

 優しく背中を押すのは三男の(つかさ)くん。持っていた私の荷物を返してくれる。

「全員乗ったかな? じゃあ出すよ」

 甘い鷹ちゃんの声を合図に車は静かに動き出した。


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