幼なじみたち(※全員美形)に婚カツを邪魔されるので困っています

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 私には生まれた時から超ハイスペックな幼なじみがいる。

 彼らの名前は三条鷹嗣(さんじょうたかつぐ)三条詩音(さんじょうしおん)三条司(さんじょうつかさ)

 日本を代表する大企業を経営する三条本家の三兄弟だ。

 長男の鷹ちゃんは私より二歳年上の26歳。弟二人と同じく180センチを越える長身で、優しい焦茶の瞳が印象的な彫りの深い端正な顔の美丈夫。会社をいくつか経営している。

 次男の詩音は同級生の24歳。天然の金髪と吸い込まれそうな緑の瞳の持ち主でこれまた超絶美形。やっぱりいくつかの会社の重要人物らしい。

 三男の司くんは20歳でまだ大学生。サラサラの黒髪と切れ長の黒い瞳は正に和の美! (みやび)! と言った感じで大学内にファンクラブが有るとか無いとか。目元にある泣きぼくろがやけに色っぽい美青年。

 なんでこんなに兄弟で容姿が違うのかと言うと、彼らの母親がそれぞれ違うからだ。つまり全員腹違い。
 ちなみに鷹ちゃんのお母さんは旧華族のご令嬢。詩音は元トップモデル、司くんは女医さんが母親だ。

 そしてこの三人の父親……義美(よしみ)おじさんはなかなかお茶目と言うかはっちゃけた人と言うか憎めないけど困った人で、つい先日、五人目の奥さんと離婚した。大衆とはかけ離れた価値観を持つおじさんについていくのは大変なことらしい。

 そしてそのおじさんの血を引く三兄弟もなかなかにとち狂ってぶっ飛んでいた。

 まず、鷹ちゃんも詩音も司くんも、たまたま近所に住んでいただけのしがない一市民の私に何故か執着している。

 私がものごころついた時には、既に三人からプロポーズされていた。

 司くんが初めて喋った言葉はママでもパパでもなく「なっちゃん」だ。

 その結果どんな不思議な力が働いたのか、中流家庭の生まれの私が三人と同じ『お金持ちのご子息ご令嬢御用達学園』に幼等部から通わされることになった。しかも年少さんから高等部を卒業するまで、ずっと詩音と同じクラスというオマケつき。

 正直、金銭感覚が違いすぎるクラスメイトたちの中でめちゃくちゃ居心地が悪かった。みんな金持ち喧嘩せず精神なのかイジメとかは無かったけれど。

(まぁ私に何かしたらこの三人が黙ってないからな……)

 おかげでイジメも無かった代わりに出会いも無かった。この三人の鉄壁のガードが原因で半年前まで私は処女だった。

 三人とはずっと幼なじみのままでいたい。だって鷹ちゃんも詩音も司くんも同じくらい大好きだもん。選ぶなんてできないよ。そう三人からの求婚をずっと断ってきた。

 御曹司の三人はそれぞれ相応しいお嬢さんと結婚して、私も身の丈に合った家庭を手に入れる。そうしてみんなお互い結婚した後も家族ぐるみで仲良くしていけば良い。

 だけど本気でそう言っていた私の考えは甘かったのだと半年前──司くんの二十歳の誕生日に思い知らされることになる。

 義美おじさんの血とモラル感を受け継ぐ三兄弟は、プレゼントを持って三条邸を訪れた私ににっこり笑ってこう告げたのだ。


 三人の中から一人を選べないのなら、無理に選ばなくて良いよ。
 俺達三人と同時に愛し合えば良い。
 ──と。


 あの日からずっと、私は蜂蜜の中で溺れている気分だ。

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