(続編)ありきたりな恋の話ですが、忘れられない恋です[出産・育児編]
「おはよう」
晶斗の声に反応するように、胎動を感じた。
「あっ、動いた」
晶斗と同時に目が合い、クスリと微笑む。
「俺達の子は朝から元気がいいな」
「そうだね」
時たま、暴れるようにボコボコと動かれ、しばらく痛みで身動きが取れなくなるのがちょっと困り事だけど、元気に育っているのだと思うと、嬉しくなる。
「パパもママもお前に会えるの楽しみしてるから、もう少しだけママのお腹の中でいい子にしてるんだぞ」
私のお腹を撫で、優しい声で語りかける彼の姿をみると、あの頃の私は、こんな日が来ると夢にも思っていなかったなぁと思うのだった。
晶斗を晶兄としたって恋してた私は、彼も私と同じ気持ちでいると勘違いして(結局は、勘違いではなかったのだけど)告白して、結婚するからと振られたあの日からしばらく涙を何度も流した。
慰めてくれる友人、私の代わりに怒りをぶちまける鳴海、一緒に泣いてくれた結菜ちゃん達のおかげで、部屋に引きこもることもなく、前向きに次へ進むべきだと思えるまでなったが、同じ街で彼の幸せを見聞きしたくない私は、就職先が隣県なことを理由に、すぐに家を出て3年近く実家に帰らずにいた。
家に帰れば、晶兄の話題が出るのはわかっていたからだった。