卒業後もまた君と
一通り友達やクラスメイト、部活で関わった人達、先生方とお別れの言葉を交わした私は家に帰って自室に入り……力尽きた。
そのままベッドの上に転がり、今日みんなと撮った多くの写真を眺める。
ぼーっとただ眺めているだけだった。
もう明日からはみんなと会えないんだなぁ……なんて思いながら横にスライドさせていくその手が完全に止まったのは、想い人とのツーショット2枚を見たとき。
静止画である彼の口が、動いた……ように見えたのだ。
1枚目は口を軽くとがらせて。
2枚目は口の端を横に広げて。
「……す、き?」
な、なんなんだこれは。
偶然……?な、わけがないよね?
2枚目はともかく、笑うべきときに口をとがらせるなんて……ないよね?
いやいや、でも、2枚目だけ見ると普通に笑ってるようにしか見えない。
冷静に考えると1枚目はふざけてあんな顔をしていたのかもしれない。そっちの方が自然だ。
この写真だけで先走って勘違い、なんてそれは痛すぎるよ、私。
落ち着け。これはなんの意味も込められてない、ただの写真。
勘違いしちゃダメ。
……そう自分に必死に言い聞かせるものの、
(期待しても、いいのかな……ダメ、かな)
結局、乙女的ポジティブ思考に辿り着く。
そんな実に自分の都合のいい妄想を頭の中に浮かべていると。
───ピロンッ
今まさに思い浮かべていた人からメッセージが届く。
いつもは未読にして放置にしがちのメッセージを慌てて確認すると……
『今から近所の公園に来られる?』
と、一言。
ほんとに、なんなんだ。
彼は、なにを考えているんだろう。
私の心を乱して、ずるい。
嬉しいやら素直になれない反抗心やらが有りつつも、
『うん。行く』
と、秒で返した私は、疲れた体のことなんて忘れて、走って公園へ向かった。