卒業後もまた君と


「お、早かったな」


メッセージを送ってきたとき、既に公園にいたのか涼しい顔でこちらを見やる。

桜の木の下のベンチに座っていた彼に桜の雨が降っていて、その姿がまた綺麗で……胸のドキドキが一層増した。


「自分が呼んだんじゃん……」

内心を悟らせないよう、いつも通りの軽口でわざとぷくっと口をふくらませてみせる。

それもそうだけどさ、と向こうもいつも通りの軽い調子で笑ったあと、真っ直ぐな目をこちらに向けた。

じっと私の目を見つめて……その目に見つめられて、私は動けなくなる。


「……気づいただろ?」


さすがにこの空気で何が?とふざけるほど馬鹿な私ではない。
真剣な声で聞いてきたということはつまり、私のさっきの乙女的ポジティブ思考は間違いではなかったってことかな……?


『す、き』


カメラを通してこちらを見た彼からの告白を思い出し、ぽっと頬が、桜と同じ色に染まる。


「なぁ……。好き」


カメラではない、彼からの、声での告白にドキドキを通り越して、涙が出そうになる。

これは……都合のいい夢……?


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