Dying music〜音楽を染め上げろ〜
夕飯も食べ終わって寝床の準備。
この家には個室がそれぞれある。一階にお母さんと雄大さんの部屋がそれぞれあって、二階に残りの俺たちの部屋。
本当は二階は2室だけだったんだけど、お母さんがリフォーム業者に頼んで壁ぶっ壊して作ってもらった。
押し入れから布団3セット出してリビングに運
ぶ。
「ごめんね、みんなで雑魚寝で。」
「大丈夫!何から何まで悪いな…」
この家、5人暮らしだけれどそこまで大きい家じゃない。寝るスペースもないからリビングのソファとテーブルをどけて3人分の寝床を作った。涼の足が二人に当たらないように調整する。
男子高校生3人…う~ん、寝返りは打てるだろう。
「夏樹~、充電器借りられる〜?」
怜斗が聞いてくる。
「部屋にあるかも。取って来るから待ってて。」
充電器、確か学校用のリュックに入れてたはず。
「夏樹って自分の部屋あんの?」
「あるけど?」
「いいなぁ〜。俺は第と共同部屋だからさ。一人部屋僅れるわ。」
涼は羨ましそうに言った。そうか、涼は弟がいるからな。でも部屋といっても寝ると勉強すると音楽関係で使う以外用途ないけどね。狭いし。
「俺、夏樹の部屋見たーい!!!」
はぃ…?
怜斗がトコトコと俺の後をついてきた。
「俺もー!何なら夏樹の部屋で語ろうぜ? 軽音トークwww」
涼も手を挙げてついてくる。
な、何でそうなる!?
「え、い、今か、りゃってこと?」
突然のことで呂律が回らなくなる。
「そう!まだ9時だぜ?夜はこれからだろ!?」
……………
いやいやいやいや待て待て待て待て。
ちょっと待て。夜はこれから?
そうかもしれないけどさ。ちょっと待てよ。
ええ、助けが欲しい…
〜ッ蓮‼︎‼︎!
ソファでくつろいでいる蓮に視線を送った。
(いいじゃん軽音トーク。して来いよ。)
目でそう言われる。
(俺の部屋今どうなってるか分かるだろ?)
(は?いつもの…。ハァッッッッッッ‼︎‼︎‼︎)
蓮がダァッ!と起き上がった。気づくの遅せえよ。目線と顔の動きで蓮に頼む。
(使え。)
(ありがと。)
「…分かった。じゃあ5分待って。今、部屋散らかっているから片付ける。」
涼たちには下で待ってもらうことにしてすぐに自室に向かった。
いや、軽音トークをすることはいいんだよ。ただ、俺の部屋はー。
ガチャ、
部屋全体が作業部屋なんだよ!
録音は簡単な物ならこの部屋で録っている。クローゼットの中に防音材を二重に敷き詰めて、ホームセンターで買ったラックを改造してレコーディング台にしたんだ。MIX なんかも自分でやるから機材もそのまま。
クッソ、あいつらがシャワー浴びている間に片しておけばよかった。
部屋の中に入って機材の電源を切った。
録音用マイクとミキサーと、作業用のパソコンも片付ける。
大きいものは連の部屋に移動。
あ、エフェクターどうしよう。あぁ、もうクローゼットに全部入れちゃえ。
これら片付ければ、ただのギター好きな人の部屋だ。
「夏樹〜?」
すぐそこで怜斗の声が聞こえた。
もう部屋前まで来てんのかよっ!
ガッっ!!!
クローゼットから飛び出たケーブルを奥に押し込んで鍵をかける。
よっし、きっかり5分。
「っドウゾ。」
部屋を開けた。