Dying music〜音楽を染め上げろ〜
「おじゃましまーす!」
ぞろぞろと入る。
恭弥の持っているお金を見て夏樹が「えっ?」と聞いた。
「夏樹のお母さんがお茶とお菓子出してくれた。」
夏樹が部屋を片付けているあいだ、夏樹のお母さんが用意してくれたんだ。「仲良くしてくれてありがとね」ってさ。
夏樹のお母さんって初めて見たけれど、すごく綺麗な人だなって思った。おしとやかで品のある女性。夏樹は髪が茶髪だけれど、夏樹のお母さんはストレートな黒髪だ。…もしかしたら、お父さん側の遺伝なのかな。でも、色白なのは似ている。夏樹、肌真っ白だかんな。
「そこらへん適当に座って。」
夏樹はミニテーブルを出すとその上にお盆を置いた。ぐるりと部屋全体を見渡す。
壁一面に防音材が敷き詰められていて机の上にはヘッドフォン。壁側にはギターが4本。全部青色だ。棚には教科書のほかに、音楽に関する書籍やギター講座の教本もある。あ、ラウンドのポスター。すごい。
「そんなにまじまじと見るなよ。」
夏樹に言われた。
「ごめん、すげえなって思って。いつもここでいてんの?」
「うん。練習は大体家でやるかな。がっつり弾きたいときはMidnight行くけど。」
壁一面に防音材って、すごくね? ミュージシャンって感じ。
「ギター4本もあるんだ。」
「アコギと、レスポール、テレキャス。いつも使っているのはストラト。」
ギターと一括りにいっても多くの種類があってそれぞれ音色や合う曲も違う。
夏樹の使っているテレキャスターという種類はパッキとしたサウンドで高音が綺麗に出る。ソロでも目立つし、リズムギターに最適。
「レスポール、持っていたんだ。」
恭弥が聞いた。恭弥はレスポールというエレキギターを使っている。パワフルなサウンドが特徴的でロックだったりハードロックの曲に合う音を奏でるギターだ。
そういえば、夏樹ストラトキャスター以外弾いているのは見たことないな。今度聞いてみたい。
夏樹のギターすげぇ綺麗な色なんだよ、青色がグラデーションになってるんだよな。
「持ってるけど、頻繁に使うほどではないかな。バンドさんにサポートで入るときに使う。んで、
軽音トークってなに話すわけ?」
夏樹はお菓子の袋を開けながら聞いてきた。
「おお〜夏樹から乗ってきたぁ!恋バナ?将来のこと語っちゃう?何なら黒歴史暴露大会でもいいぜwww」
怜斗ノリノリじゃないか。黒歴史なんて話すものじゃないだろう。
「じゃあ俺!ムフフ、みんなのぉ〜初恋はぁ〜?」
涼がふざけながら聞いてくる。
「「「キモ。」」」
上目遣いと作った声色に全員がそう言った。
「うっせえ!ほら、お前からだぞ!」
涼は強引に怜斗に話を向けた。
「俺ぇ?いつだろ。初恋自体は小1、2年くらいじゃね?」
「怜斗は中学のとき彼女いたからね。」
「いたんだ。」
夏樹がお菓子を食べるを止めて怜斗を見た。ビックリしてるじゃん。
「1年くらいで別れたけどね。~!俺ばっかりハズイじゃん!次!恭弥!」
恥ずかしさを隠すように恭弥の肩をバシバシ叩いた。
「っおいっ!」
恭弥は怜斗を押さえつけながら話始めた。
「初恋はまだ。」
「つまんなぁ〜。じゃあタイプは?」
腕で取り押さえられている怜斗が上を向いて聞く。
「年下かな。」
「うわ〜.......。」
その答えに夏樹がわかりやすく体を引いた。
「夏樹がガチで引いてるw」
「何?悪い?」
「アンタが年下とか、何を色々教え込むんだろうなって。」
夏樹のその発言に全員が納得した。コイツだもんな。想像はつくよ。
「それは分かるかもwwwんでその子も恭弥と付き合うにつれてファッションとか系統変わっていきそう(笑)」
「wwwお前、www少女漫画の見過ぎだってwwwアハハッ」
「うわぁ〜〜…。」
怜斗の発言に涼が笑う。夏樹は引きっぱなし。
「お前ら俺のことなんだと思ってんの?」
次、涼。と順に回って来る。
「俺は中2の時。吹部の子でさー。めっちゃ優しかったの!」
「こいつ気るか気らないかでウジウジしてたら先輩に取られたんだっけwww」
「そ、れ、は!しょうがないだろーがよ!」
恭弥のからかいに涼はコップを持ったまま立ち上がった。ぴちゃっとお茶がこぼれそうになる。
「危っねっ!」
「ちょっと、人の部屋でお茶こぼさないで!?」