Dying music〜音楽を染め上げろ〜
涼を落ち着かせると話題が俺に回ってきた。
「ラスト、夏樹!」
「俺もまだ本気で人好きになったことない。」
これ恥ずかしいから嘘ついているってわけじゃない。本当だからな?
「夏樹って恋愛対象的にはどっちなの?」
踏み込んでくるねぇ~。怜斗だもん、聞いてくるかあ。
「どっちも。というか、性別自体関係ないかな。」
「そうなんだ!ちな、タイプは?」
「...年上。」
「ぽいぽい(笑) 夏樹が逆にリードしそうだよな(笑)」
どういうことだよ俺がリードしそうって。でも年上のちょっと大人っぽい雰囲気ってよくない?ていうか…
「みんな珍しいよ。俺がこういうこと言っても動じないんだから。」
俺は、正直、自分のことよくわからない。ファッションはメンズライクを好んで着るし、メイクも好き。
でも、「私」っていう一人称には違和感ある。恋愛感情も…どうなんだろうな、恋愛したことないから分からないや。
はっきり言えるのは、俺は俺らしく生きたいだけ。
「前も言ったかもだけど、俺ら別に気にしない。だって今、令和だぜ?世の中こういうの普通になってきてるじゃん。」
「夏樹らしくあれればそれでよくね?」
…こいつら優しいの?それとも鈍感?
どっちにしろ心軽くなるから嬉しいけれど。
「…お前ら、何か怖い。」
「怖いってなんだよ!?」
それからお菓子を食べながら、色々話した。
学校のこと、先生の愚痴、もちろん音楽のこともな。
特別な話でも何でもない。
日常のこと、お互いのこと。
それだけの内容だけど、会話が途切れることはなかった。
ずっと喋っりっぱなし、笑いっぱなし。
「今日、俺らずっといるじゃん。本当の合宿になっちゃったよ。」
涼が笑いながら言った。そうだよ、本当は練習で終わるはずだったんだから、こうなるとは思ってもいなかった。この大嵐のせいだけど。
「でも楽しかった!夏樹のこと結構知れたし!」
怜斗が嬉しそうにそう言った。
「俺のこと?」
不思議に思い聞き返す。
「雷が苦手なこととか甘党なこととか。」
「クールイメージだったけど、この家では以外と未っ子感あったりな。」
「長澤さんに褒められるとちょっと嬉しい がるところとか!」
3人が口々に言う。そんなところまで見られてたのか。恥ずかしいな、そんなこと知って何になるんだ。
確かに、俺もみんなのこと、いつもよりは知れたかな。
涼が犬苦手なのは意外だった。あんなでっかい図体してるのに吠えられてビビるとか面白すぎ。
恭弥が野外フェス好きなのにもびっくりした。インドアっていうイメージが強かったから。
怜斗がダンスがすごいのは知っていたけど、県選抜のチームで全国大会出てたって話を聞いたときは思わず声が出た。
楽し、かったかな…。
「…もう遅いよ。そろそろお開きだ。」
照れを隠すようにそう言った。