Dying music〜音楽を染め上げろ〜
次の部活 ー
ここはもっと緩急をつけて弾かなー
ー あっ。
♫〜…… ーーー
途中で止まってしまった。あれ、手が…
震えてる?
え、何。攣ったか?
「夏樹?どうした?」
みんなが心配そう俺を見る。
「あ、ごめん。今日ちょっと調子悪いかも。でも気にしないで。」
焦りがバレないように落ち着きを保ちながらそう答えた。
「そうか?体調悪かったら言えよ。」
そこからは特別大きなミスはなかったが、納得のいく演奏はできずに終わった。
「10分休憩!」
俺は部室を出ると廊下奥の窓際に行った。
「…何で。」
まずい。
前よりも悪化していた。ダメだ、弾けない。
どうしてもできない。何でこの間家でやったときできたじゃん。途中で手を止めるなんて、今まで一度もなかった。これ以上悪くなったら、みんなの足引っ張る。
深呼吸をして、手の震えを落ち着かせる。一回、落ち着こう。今だけ無になれ、全身から力抜いて一旦リセット。
高校生としての夏樹、
ギタリストとしてのナツ、
そして歌い手としてのCyan。
3足の草鞋を履いている今現在。
この中の一足でも脱げたらいけない。
万が一、脱げてしまったら ーー
居場所が無くなる…ーーーーー。
…………………疲れた。
…休憩時間終わっちゃう。戻らないと。
そこから時間になるまで練習と本番の立ち位置を確認した。
「今日ここまでにしよう。下校チャイムなる前に出ようぜ。」
家に帰ったら、動画編集の続きしないとだ。今月は一本上げるって決めている。
「一ーき」
俺のステージは結局どうなったんだろう。師匠に連絡入れて確認しよう。
「一ーき?」
来月は文化祭があるからステージのスケジュールも組みなおして、それから一、
「夏樹!」
!!‼︎
後ろから涼に名前を呼ばれ、驚いて振り返った。
「…ごめん。どうした?」
「あ、いやこのあとコンビニ行くけれど来るかなって。」
「行く。もうちょっとで支度終わる。」
多分、何回か呼ばれていたな。考え事していて気づかなかった。怜斗がアンプを片付けながら
「夏樹大丈大?疲れてねえ?」
と聞いてくる。
「大丈大。ちょっと考え事していただけだから。」
俺が焦っていたら、それが周りに伝染する。やる気やコンディションに繋がるから絶対に悟られないようにしなきゃ。平然を保って、
いつも通り、冷静に。