Dying music〜音楽を染め上げろ〜
それからしばらくは録音をやめた。
録ってみても納得いかないしつまんない。自信が持たなくて、途中放棄してしまう。
溜め込んでいる気持ちをいつも通り書き出してみたけれど、作曲するかって気にはならない。
ギターは、弾きたいけれど弾いたら自分の今の状態に絶望するだけだから。
漠然と、不安と焦りが残るのみ。
ピロン♪
通知が鳴る。
コードさんからだ。
ー『マスター通じて聞いたんだけどさ、不調なんだって?』
師匠、マスターに話したのか。よりによって一番知られたくないコードにまで伝わるとか最悪。
ー『ちょっと調子悪いだけです。』
そう返した。
ー『喉痛めた?最近ステージ立ってないって聞いたから。』
ステージにはテスト前から立っていない。店には行っているんだけど、裏作業を手伝うだけでお客さんに顔は見せていない。
ー『今、調整してます。』
ー『まぁ無理すんなよ。なんかあったら言ってね。』
無理、ね。
心配してくれるのはありがたいよ。でもさ、
無理しないとやっていけないじゃん。
Midnightのお客さんやCyanのリスナーが待っているんだ。俺は歌を届けないといけないんだよ。
プレッシャーや期待。多少無理しないとやっていけない。
活動者が故の重圧、コードさんも分かるでしょ…。
明日も部活だ。
明日はコックピット合わせてみるんだっけな。大丈夫かな。テンポもフレーズもまだ納得いく演奏できてないんだけど。恭弥とのラストだって半分もできていない、未完成状態。
いつも楽しみにしていたはずの部活が、苦痛になりかけている。
…ここで自分だけ折れてどうする。
「.......頑張らないと。」