Dying music〜音楽を染め上げろ〜
カランコロン…
「あ,ナツ!久しぶり」
そう声をかけてくれたのは佐々木さん。大学生で黒髪に金色メッシュのイケてる兄さん。
「なになに〜?ナツくんきたのぉ〜?」
奥から甲高い声をあげて出てきたのは杏樹さん。ピンク色の髪をポニーテールにしてる。あとびっくりするのはピアスの量かな?両耳合わせて10個あいてる。
「杏樹さん苦しいィ…」
抱きついてくる杏樹さんを引っ剥がす。
『Midnight』は1階がライブハウス兼飲食店,2階が音楽スタジオになってる。このストリート街でも人気の店。
杏樹さんと佐々木さんはここでバイト中。俺はここのお客さんからは"ナツ"と呼ばれている。
すると,
「ナツキ。」
名前を呼ばれた。低いハスキー声,出てきたのは髭を生やしたいかついおじさん。この人が,
長澤直次《ながさわなおつぐ》さん。
俺の音楽の”師匠“。
「Aスタとってある。使え。CAN℃メンバー来るまでに準備済ませとけ。」
淡々と必要事項だけ言うとカウンターの方へ戻ってしまった。
俺も2階のAスタに移動して準備開始。
ギターを取り出してシールドとアンプを繋げる。弾きながら音を調整していく。
🎶〜♪🎶♪〜♬…
よし,おっけ。
ーガチャッッ
「飲みもんと食いもん。」
プレートを持って師匠が入って来た。
「いただきます。」
ナポリタンめっちゃおいひぃ。
「そーいや,昼間のLINEなんですか?喉大丈夫か的なヤツ。」
「あー…あれか。」
「いつもはそんな気にかけないじゃないですか?」
「お前の喉が心配でな。」
やっぱり?
「最近お前の歌い方無理してんじゃねぇかなって思ってよ。お前潰れると高音カッスカスでめちゃくちゃ汚ねぇだろ。」
えぇぁ…そこまでディスる?へこむんだけど
「それでぶっ壊すより前に止めておこうと思った。だからあんまり出さなかった。」
この前ステージに立った時、珍しくラブソングを歌ったんだけど、そのサビの高音でやられた。そのあと、声がガッサガサになって大変なことになったんだっけ。
「まだ喉使って歌ってる感じあります?」
「いや,上達してる。腹から出てる。でもまだ残ってるな。」
マジかぁ。
喉は裏声やビブラート・ミックスボイスなど声を出すのに重要な役目を果たす。ガッサガサじゃ困る。
自分でもボイトレとかやって気をつけていたつもりだったんだけどなぁ。まだまだか。
「声量は?」
「上がってる。でもまだガキだ。」
ガキって。もう高校生なんだけどな。あと3つで18歳、成人になるのに。
「この年ですまだガキ扱いですか?」
「当たり前だろ。15のくせに。」
「7月で16歳です。」
「そう変わんねぇよ。」