Dying music〜音楽を染め上げろ〜




すぐにAスタに戻って持ってきた服に着替えた。そしてメイク道具を一通り床に広げる。




ベースは下地とパウダーで簡単に済ませる。本当はパフとかちゃんと使って丁寧にやりたいところだけど,今回はそんな時間ないし。




アイメイクはいつも通りブラウン系で目を囲う。そんで,涙袋を書いて目尻の三角ゾーンに赤色を乗せる。どうせ仮面つけるから隠れるけどね。


コンシーラーで唇の色を消してからワインレッド色のティントを内側に塗って広げる。








…もうこんなんでいいや。








ヘアセットに移る。ヘアアイロンでウルフカットの髪を外ハネにしていく。前髪は整えるだけ。これもまたフードを被るので見えたいけど。気合い入れるために毎回やってる。





んー…今日は上手く行かないな。





カチャカチャ…





一通り終えたら青色のカラーワックスを手に取り,毛先を中心に色をつけていく。




あ、服につきそう…危なかった。






よし,完成。








それから調整や声出しをする。




♪〜🎶ーー♪…あァァァー…あ〜…








ガチャッ。


師匠が入ってきた。











「ー出番だぞ。」










「はい。」











あぁ。久しぶりのステージだ…。









俺はステージに上がる前,ルーティンをするために必ずスタジオの鏡の前に立つ。







鏡の前で目を閉じる。






そして拳を心臓の上に軽く当てて唱える。
















「ー…想いを届けろ,歌を届けろ。音楽をーーー」





















「ー自分色に染め上げろ。」















……目を開けるとそこにいるのは,如月夏樹でも,師匠の弟子でも,代理演奏するギタリストでも無い。







今から俺は…ーーー















































『ーー歌い手,Cyan《シアン》になる。』








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