Dying music〜音楽を染め上げろ〜
「お前それどういうこと?」
驚いた様子で恭弥が聞く。
「前見た時はわからなかったけど,確かにそいつだった!髪の毛もあのくらいの色で,あのギターケース背負ってたし!」
「どこで見たんだ?」
涼がさらに聞く。
「白河駅。夜、ダンスレッスンの帰りに。そのまま南口から出てったよ。」
…南口?
白河駅の南口といえば居酒屋やバー,キャバクラが立ち並ぶ繁華街だ。
「夜に南口?何で?」
「夜の商売とかやってんじゃね?笑」
恭弥がクスッと笑っていった。
「マジか、流石に南口方面行く勇気はねぇなぁ…」
涼がうーんと唸る。
「つーかさ、涼がそこまでしてアイツを誘うのは何で?」
怜斗が尋ねてきた。
理由?理由か……
「んー…単純に如月くんと一緒に演奏したいから、かな。」
「それってどういう?」
恭弥も言う。
「ん〜なんつーかさ、この間のギターの演奏が頭から離れなくてさ。技術はもちろん,アレンジも加えながらオリジナリティがある演奏をしてた。あの音と俺らの音が合わさったらどれだけすごい演奏になるんだろうって思って。」
涼は続ける。
「多分だけど、彼1人が入るだけで,すごい楽しい演奏ができると思うんだよな。」
「はぁっ…」
怜斗がため息をついた。
「俺は正直あいつのこと何も知らないし,感じのいいやつだとも思わない。
でも、涼がそこまで言うんなら出来る限りは協力するから。」
怜斗…
恭弥もダルそうに答えた。
「まぁ気が済むまで勧誘トライしてみるのはいいんじゃない?」
「…ありがとな。」
キーンコーンカーンコーン…
ヤバっ‼︎‼︎‼︎
予鈴のチャイムが鳴った。気づけばもう4限が始まる5分前だった。
「これはお前のせいだからなっ!」
「悪かったッ!」
「おい,俺4限の授業移動なんだけどッ⁈」
「だから悪かったってッ‼︎」
3人で廊下と階段を全力ダッシュした。