Dying music〜音楽を染め上げろ〜
「え?」
自分でもわかった。
もうこれ以上話されたら歯止めが効かなくなる。
「お前らはどうせ人数集めたいだけだろ。そうすれば部活扱いだしね。」
「人数とかそう言うんじゃー」
「何が違うんだよッッッ⁉︎」
一気に感情が表に出る。
もうやめて欲しい。
過去を掘り返したくないんだよ。
「違くないだろ⁈この間から毎回毎回保健室来やがって。マジでウゼェんだよッッッ‼︎」
自分でも引くほど口が悪い。
「存在なんてどうでもいい。ただの道具。そうでしょ?使い終わったらすぐ捨てる。毎回そうだよ。お前らもおんなじだろうがよ!」
呼吸を荒くして早口でまくしあげた。
「違ぇよッ!」
リョウが声を張り上げた。
「道具とか,そんなんじゃねぇーよ!俺らは別に部活とかどうでもいい。ただ純粋に如月夏樹とバンドがしたいんだよ!」
…なんなんだよ。
なんで諦めつかないんだよ…
ほんと…消えろよ…
もう、やめてくれ。
絶対に上手くいかない。
どこかで終わる。離れていく。
バンドとか所詮、そういうもの。
なのに、
なんで諦めようとしない。
「最初のギターの音聞いた瞬間からずっと!凄いって思ったよ。なんでこんなに上手いんだろう,俺らと合わさったらどんな音になるんだろうって。
さっきのステージもそうだ。めっちゃパワフルでこう,なんか,言葉には出来ないくらい演奏に惹きつけられたんだ。
でも,めっちゃ上手なのに何か足りてないっつーか、」
足りない…?
「楽しさが足りてないんだと思う。」
その言葉を最初理解できなかった。
楽しさ?ばか言うな。俺は好きでギター弾いてんだ。好きだから楽しいに決まってる…
「パワフルで人を惹きつける演奏ってのは確か。でも1人…寂しい演奏だ。居場所がないっていうか,音が迷子になってる。」
音が迷子…あっ。
ー「最近の夏樹の音はどこかに行ったり来たりしているな。」
前に師匠に言われたことを思い出した。
なぜ,コイツが気づく?
さっきから頭が回らない。ウザイしうるさいんだけど,コイツの言っていることが的を得ているような気がして,グルグルする。
「俺らがその音の居場所を作りたい。俺らのことが信じられないなら俺らが信じさせる。」
真っ直ぐ目を見て言われた。
「改めてもう一度言う。一緒にバンドがやりたい。今までしつこく勧誘してごめん。でもこれが最後。」
リョウは深く頭を下げた。
そのまま「じゃあ」といってレイトと元来た道を帰って行った。
残るはキョウヤ。
「…アンタも帰れよ。」
言い放つと、キョウヤは無視して目の前に立った。
「確かに、こんなコーコーセーの部活かもしれないけどさ。一回やってみたら案外面白いんじゃない?」
…何それ。根拠どこにあるんだよ。
「…前から思ってたけど,アンタ腹立つ。」
「そりゃどーも笑」
チッ…
「毎週月曜と木曜,2階の多目的小ルームでしているから。」
ふっ,と笑うとそれだけ言って帰っていった。