Dying music〜音楽を染め上げろ〜
……………………………







「おはよ〜」


教室は朝から騒がしい。その中で多賀涼はスマホをいじっていた。


「あ,涼!おはよ!」

「はよ。」




 話しかけてきたのは4組の杉崎怜斗と2組の古川恭弥。3人は小中高一緒の仲良し3人組。



涼はみんなの兄貴・まとめ役って感じ。



怜斗はいっつもうるさい。でも友達思いのいい奴。



恭弥はクール。そんで毒舌…それぞれ性格は違うけど何故か気は合う。




「なぁ,昨日のCyanの歌ってみた聴いた⁈
『カミナリロジック』!」



怜斗がテンション高めで話してきた。



「あ,聴いた‼︎やっぱすげーよなぁ」



昨日の夜、予告なしに突然投稿された曲。




「スピード感あってヤバかった!恭弥も聴いたか⁇」

「あぁ聴いた。」

「どうよ?」

「さすがって感じ。低音から高音への切り替えにびっくり。」






 今話しているのは,とある歌い手について。




名前は『Cyan』《シアン》



…ネットで活動している正体不明の高校生歌い手。中性的な声が特徴でさまざまな声を自由に使い分ける。



分かっているのは現在高校1年生であるということ。性別も素顔も明かさず,その歌唱力と表現力のみで人気を集めている。



涼が


「チャンネル登録者数も年々増えてるよな。」





Cyanは全ての作業を1人でこなしているという噂がある。MIX・編集・マスタリング・エンコード・さらにはイラストまで。






「それより」


恭弥が2人に言った。




「どーすんの?人集め。」












……あ…





「ワスレテタ」


涼がカタコトで言う。



「はぁ…しっかりしろよリーダー。」



恭弥は呆れてため息をついた。





「マジで人集めどうすんだ?」

「何回も聞くけど3人じゃダメなの?」

「まぁねぇ〜…最低4人いないと部活認められないし。」








 ドラム,ギター,ベース…3人の共通の趣味はズバリ、“音楽“。



小さい頃から「バンドしたい」と言っていた。そして高校に入って軽音楽部を作ろうとしていて,そのあと1人を探している…





「できればキーボードかギターできる人いないかな〜」




涼が言う。



キーンコーンカーンコーン




予鈴が鳴る。


「じゃあまた昼な‼︎」

「おう。」


恭弥と怜斗は自分のクラスへ戻っていった。










「席つけー」






担任の加藤英明。47歳の…おじさん?この学校の中では珍しい,生徒に好かれている先生だ。



「出欠とるぞー。赤井,五十嵐,石田,江川…」




涼はボーッと窓の外を見ていた。



(晴れてんなぁ)



「きさ…休みだな。」




途中,加藤がボソッと言ったのを涼は聞き逃さなかった。





 涼の3つ後ろの席。1,2週間前からずっと空いたままだ。確か苗字は…


  



(きさらぎ…なんだっけ?)






そう。きさらぎ。珍しくて頭に残っていた。
でも顔も下の名前もわからない。



(不登校かな。)



入学式がついこの間あったばかりで,特別いじめなどがあったわけではない。なのになんで?と,考えつつ1限に備えて教科書を出す。




(あ〜ッッ‼︎誰かいないのかよ,バンドメンバー‼︎)









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