Dying music〜音楽を染め上げろ〜
次の日の放課後、Midnightに行って師匠に事情を話した。
「だから,Cyanとしてはもちろんだけど、ナツとしてもステージに立てる回数が少なくなります。」
学校に行っていない頃は、出番があれば特別な用事がない限り依頼は受けていたし,飛び込みのステージも難なくいけていた。
でも学校に通い始めるとなると時間が制限される。昼間はもちろん授業でダメ。それに部活がある月,木曜日も。学校行事関係が始まってきたら放課後も埋まってしまうかもしれない。
「それじゃあ出番は曜日固定にするか。」
平日はお客さんが少なめだから体力的に負担が少ない。時間が多く取れる休日にコラボだったりソロを入れてもらえればちょうどいい。
「予約は土曜日多めにしとくな。Cyanとしてはいつも通り、ランダムでいいな。」
「はい。」
「にしても軽音楽部か。どうした急に?あんなにもうバンドはやらないって言ってたじゃねぇか。」
…師匠が1番分かっている。始めこのことを伝えたとき,驚いていた。と同時に、心配そうな感じもした。
「不安ですよ。でも、好奇心の方が勝っちゃいました。」
そうかよ、といって師匠はコーヒーを一口飲んだ。
「動画の方も大変になるな。」
「そうですね,頻度が落ちるのは確かです。」
今までは時間に余裕があったから1ヶ月に1本くらいは投稿できていた。今のままでも低頻度なのに、これからはもっとスローペースになる。
「動画,伸びてんのか?」
「ぼちぼちです。いいのは伸びてます。」
「やっぱりオリジナルの方が伸びやすいのか?」
「半々くらいです。」
「ほぅ。」
「そろそろ新曲も書こうと思っていて。近いうちにAスタ籠るかもです。」
「次はどんな感じにするんだ?」
「ピアノ主旋律の曲にしようかなって。」
「珍しいな。ピアノって。」
「メロディはできてるんですよ。」
これです、と俺はスマホを差し出して師匠に音源をきかせた。
「なんだこれ…今までと全く雰囲気も曲調も違うじゃないか。」
驚いた様子でこちらを見る。
「自分でもびっくりですよ。最後まで作れるかまだ分かりません。」
「これは…。リスナーが騒ぐぞ。」