Dying music〜音楽を染め上げろ〜

最近学校がめちゃくちゃ楽しい。なぜかって？部活だよ、部活！！夏樹がはいってから格段に演奏が楽しくなった。


それで今、6月の高校生バンドフェスに向けて練習している最中なのだが…










「まとまってきてはいるな。」




怜斗が水を飲みながら言った。



「俺どうしても高低差激しいところがうまく歌えなくてさ。」

「どこだ?」




怜斗は『地上線の彼方。』の歌詞の部分を指さした。




「カミナリロジックのほうは早いだけで音程は取れるからそこまで難しくはないんだ。でもこっちはサビで喉がやられる。」





原曲を注意深く聞いてみる。

本当だ。ここ、一気に高くなっている。


「どうするかな。」

「キー下げて歌う？」

「そしたら前半がきつくなる。」



悩んでいると夏樹がやってきた。





「ここ出すのが難しいの？」





歌詞を指さして言った。





「ああ。」





夏樹はイヤホンを付けて原曲を聞いた。該当箇所を何回か再生し、止めていく。夏樹は怜斗のほうを向くと、




「ここ、いつもどんなふうに歌ってる？一回歌ってみ?」





一度歌わせた。





「もう一回。」




何度か歌声を聞くとうなずきながら答えた。




「喉だけで歌ってるのかも。」






「喉?」

「うん。音の高低を喉だけで出そうとしてる。それで負担かかってるからガサガサってなったりする。お腹に力入れてみ。あと、Mixボイスって知ってる？」

「Mixボイス？」

「うん。プロのシンガーさんも使っている発声方法。それ使えば多少は高低音の切り替えがしやすくなると思う。」





そういうと夏樹は MIXボイスについて説明し
始めた。



Mixボイスは簡単に言えば、「楽に地声の感覚で高音を出す方法」らしい。



「裏声の部分にある音の高さと、地声の部分にある音の厚さを合わせたもの。この二つを混ぜると高音が力強くなる。」




15分くらいレクチャーを行い、一回怜斗に歌わせた。



「さっきよりも楽になった！」

「無理している感なくなったな。」




恭弥もいう。



「あとは風呂とかで、鼻歌で高い声と低い声を交互に出してみるといいよ。」

「すげえな、夏樹。歌い方のレクチャーまででできるのかよ！」

「前に店に来ていたバンドの人に教えてもらっただけ。」




夏樹って本当にすごいな。音楽のことなんでも知っている。センスももちろんあるんだろう。音のとらえ方、リズム、メロディー。自分の演奏だけじゃなくて俺にも丁寧にアドバイスしてくれる。




なんだよ、めっちゃいい奴じゃん。




「何で笑ってんの涼？」



恭弥に聞かれる。




「いや、ちょっとな（笑)」





嬉しくてニヤつきが止まらない。






「気持ち悪い。」





小声でボソッと夏樹が吐いた。




「おい夏樹、てめぇ今なんつった！？」





殴る真似をしながら夏樹を追いかける。