Dying music〜音楽を染め上げろ〜

数日前。


「師匠、少しお話があります。」

「なんだ、改まって？」


作業する手を止めて振り返る。




「みんなのことMidnightに連れてきてもいいですか？」


師匠は何が何だかわからない様子で数秒止まった。


「みんなって…あの軽音楽のか？」


と、確認してきた。



「はい。」

「・・・」





さすがに夜だし、高校生が出入りしていたらヤバいか。



「やっぱり高校生を店に入れるのは無理そうですよね。すみません変なこと言って。」



師匠の微妙な反応を見てそう答えた。しかし師匠は、



「いや、酒提供しなければ入店自体は問題ない。」



よかった…。ほっとして胸をなでおろす。



でも師匠は戸惑った様子で聞いてきた。



「ど、どうした？」

「え?」

「急に連れてきたいって…。」



驚くよな。だってここに知り合いとか連れてきたことないもん。俺は師匠に言った。



「バンドの勉強にしたくて。」


「俺、最近みんなで演奏することが少し楽しいんだ。でもまだまだ足りないところがたくさんある。それはあいつらも一緒で…その…」



上手く言葉にできない。



「師匠に、みんなのこと…ちゃんと紹介、したいし…。」



もごもごと言葉を濁しながらも伝えてみる。師匠は考えると、



「わかった。再来週のステージならバンドの予約がいつもより多く入っているから、その日でもいいか？」



承諾してくれた。



「ありがとうございます。」



この場所はプロから学生のバンドまでたくさん人が来る。曲も様々だから、バンドの勉強にはMidnightが最適かなって。



多分、あいつらはバンドの生演奏だったり、実際のライブの雰囲気に慣れていない。

俺も、いざ自分がメンバーとして演奏する側になると、どう合わせていくのか、一体感やばらつきをなくすにはどうすればいいのかが分からない。映像や音楽番組を見るよりも実際に肌で感じたほうが早いと思った。