Dying music〜音楽を染め上げろ〜
第ニ音
新ステージ
「Midnightにみんなを連れてきたい。」
そう夏樹から言われたとき、驚いた。
前までは家に誰かを招くこともなければ誰かと出かけることも、遊ぶこともなかった。
夏樹はここ最近変わった。俺があの日、初めてこいつに会ったときは目に光がなかった。
まだ8歳の子供なのに、泣きもせず、笑いもせず、怒りもせず。一切感情がなかった。それが今はこんなに表情が豊かになった。他人から見ればまだ無愛想なガキンチョだろう。
だがな、俺にとっては可愛い可愛い、一番子だ。
ー「あれはなに?」
ー「あれはな、アンプっていうやつだ。」
ー「ランプ?」
ー「アンプだ。エレキギターがあっただろ?あれに繋いで音を増幅させるものだ。」
ーーーー………
ー「小学校の音楽つまらない。ずっとりコーダーばっかり。」
ー「暇だったらここに来い。今度はドラムやってみるか。」
ーーーーー……
ー「夏樹、大丈夫か?また痩せたんじゃないか。」
ー「大丈夫です。」
ー「んなわけあるか。この前のステージだって絶不調だっただろうが。」
ー「本当に大丈夫です。失礼します。」
月日が流れるのは早いな…。
「師匠、」
夏樹がギターを持ってやってきた。
「この間の曲アレンジしてみたんで聞いてもらってもいいですか。」
夏樹は定期的に、既存の曲をアレンジしてみたり次のギター代理のチェックだったりを俺に見せてくる。
初めてギターを教えたのは夏樹が8歳のとき。はじめは少しでも楽しいと思ってほしくて教えた。しかし、いつの間にか夏樹は音楽にのめりこんでいって、俺も本格的に指導を始めた。
「おう。」
そういうと夏樹はギターを弾き始めた。
🎶〜♩♬〜♪〜
夏樹の演奏は高校生とは思えないようなプロ立みの演奏で観客を圧倒させる。テクニックはピカイチ。
「どうでしたか。」
「技術としては申し分ない。ただ、一曲通して緩急がないな。つまんねぇ。もっと強く弾いたほうがいい。もっと遊ばせてもいいんじゃないか。」
そうアドバイスすると、俺はギターを持ってきてフレーズを弾いた。もっとこのくらい音とっても違和感はないだろう。
「すげぇ…。」
夏樹は目をキラキラさせてギターを見た。
「まだまだだな。」
夏樹の頭をわしゃわしゃと撫でた。
「うーん…。」
悔しそうに唸る夏樹。そういう反応を見るとちゃんと子供なんだな、と安心する。こいつは性格も仕草も子供らしくないからな。学生証を出さないとたまに大学生と間違えられもする。あの焦っている夏樹は面白いぞ。