Dying music〜音楽を染め上げろ〜

夏樹が初めて外部のステージに立った。以外にも見合う収穫はあった。









「歌い手」



















既存の曲を歌ったものを動画共有サイトに投稿する人。主にカバーされるのは、バーチャルシンガーが歌唱するボーカロイド曲。




ボカロ曲は機械音だ。人間が歌うことを想定としていないから、速い、高低差が激しい、息が続かない。






夏樹は歌に感情を乗せることが上手い。歌詞やリズムによって歌い方を変えて、音自体を自分でコントロールする。












あいつは今まで殻を破ろうとしなかった。





Midnightのサポート演奏やコラボ演奏のときも、夏樹は強弱やテクニックレベルまでもを相手バンドに合わせる。



周りに遠慮しているからなのか、他人の目が怖いのか、理由は分からない。数歩先を突酸してほしいと思っていた。





それが、遂に。自分を曝け出して立ったんだ。








送られてきた動画を見たときは目を疑った。本当に夏樹なのか、と。





まず弾き方が違っていた。いつもはあんな乱暴な弾き方はしないし、アドリブを無理やりぶち込んだりはしない。



ヘッドピーンなんてステージでやっているところ見たことなかったしな。



あくまで原曲リスペクトスタイルだった。





歌の方もだ。後半は泣いていたんだろうか、声が震えていた。昔のことを思い出してしまったかと心配もした。だけど今回の夏樹は、本当の自分の姿で歌っていた。






俺は夏樹がどこを目指しているのか分からない。だが、夏樹が音楽を好きである限り、俺は応援し続けることに変わりはない。







「殻を破る、第一関門はクリアだな。次は…」