あの夏空の下、君と生きた七日間。
「痛ぇ!」

「なに名言めいたこと言ってんだよ!部長でもないくせに。ま、チームの第2エースではあるけんど」

からかうような言い方でツッコミを入れてきたのは、ウチの部長・羽宮先輩だ。ちなみにチームの第1エースでもある。くっきり太い眉にどっしりした顎、そして広い背中。逞しくていかにも部長らしい容姿だ。

その反面、相当な部活バカでもあり、勉強は二の次みたいな厳かになっているんだそう。

「はようございます。羽宮先輩」

痛そうな顔をする赤木を置いて、冷静な自分が挨拶をする。

「おう。しっかし白澄のボールって、ネット超えたことあんのか?俺、見たことねぇから引退後が心配だ」

訝しげな顔をして、思い悩んでいるように頭をポリポリいじる羽宮先輩。引退まではまだ、5ヶ月もあるのに気が早いな、と思った。

「ありましたよ。ごくわずかな回数ですが」

呆れ返っているような口調で、赤木は返事をした。それもすべて去年の夏より前のことだが、事実ということに変わりはない。

「そうか。ならポジションはウイングスパイカーより、リベロの方が活躍が見込めるかもしれないな。今更言うのもなんだが」

確かに。正直、運悪く出ることになった練習試合でも、ボールを打つことよりレシーブすることの方が幾分か多い。その上、ミスをする回数も少ない。

でもこのウイングスパイカーというポジションは、母さんの希望だから変えられない。いや、変えにくいのだ。
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