あの夏空の下、君と生きた七日間。
「おはよーう。若き部員たちよ」

入り口の方から老けたおじいさんのような、間延びした声が聞こえてくる。バレー部の顧問を務める草木茂先生だ。年はもう83歳を過ぎた立派なお年寄りであり、腰が曲がっていながらも、肌は健康そう。

「部員、集合ー!」

羽宮先輩の声に部員がぞろぞろと、体育館後方に集まってくる。羽宮先輩含む3年生が2名、入部したての1年生が3名、そして僕と赤木含む2年生が4名、合計9名の小規模な部活だ。

「さて、もうすぐじゃのう。夏のインターハイ。3日後じゃから、皆の活躍に期待しとるで」

顔のシワをクシャリとさせて微笑みながら草木先生は言った。

「目指せ!準優勝!」

「そこは優勝じゃないんですか?羽宮先輩」

高らかに宣言する彼にツッコミを入れる赤木。

「うむ。去年は3位だったからな」

しかも、僕のサーブミスのせいで。

「どうせなら狙いましょうよー。優勝」

すがるように赤木が言う。このふたりのやり取りはいつも見ていて、おもしろみがある。

「今度こそ、心葉高校に勝つぞー!そんで、獲る。準優勝!」

「おー!」

体育館中に響く、生き生きとした活気のある声。誰も赤木のツッコミなんか、耳にも入れてないらしい。
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