あの夏空の下、君と生きた七日間。
「自己紹介して」

緊張でもしているのだろうか。彼女は呼吸をする仕草をひとつしてから、意を決したように口を開いた。

「はじめまして。空野千春です。アフリカから来ました。日本語とかまだ勉強中なので、いろいろ教えてくれると嬉しいです。短い間になるかもしれませんが、よろしくお願いします!」

いかにも、張り切っている様子の声。ついさっきまでの緊張があるような、素振りはどこにいったのやら。

そう思う程、彼女・千春は爽やかな挨拶をした。それから深々と会釈をする。

頭の中にはクエスチョンマークが浮かんだ。彼女はアフリカ人と言っているのに、日本語ペラペラに聞こえたのは気のせいだろうか。

歓迎の拍手がまばらになる中、顔を上げた千春はその茜色の目を見開いた。

どうやら僕の存在にようやく気づいたらしい。それと同時に今朝、河川敷で会った空野千春と同一人物だということがわかる。

目を合わせるのも気まずくて、咄嗟に外の景色へ目を映した。

空では飛行機雲がすーっと、一本の白線を描いていた。校庭の桜の木には当然、花など咲いてなく、日射しを浴びた緑の葉っぱ達がぎらぎらと光を帯びている。

「じゃあ、席はあそこね。海原君よろしくー!」

やけにテンションの高そうな担任の声が、鼓膜をこれほどまでかとくすぐっていく。隣を見ればなんと、昨日まではなかった空白の席がひとつ、置かれているではないか。

それはついさっき、教室に入ってきた時に全然気がつかなかったくらい、異様に馴染んでいた。
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