あの夏空の下、君と生きた七日間。
含みのある笑みで双葉は言った。意味を理解した僕はえっ?今から?と叫び声をあげてしまう。

いや、時間の都合が悪いわけではない。ただ屋上なんて、今ではどこにでもあるものだと思い込んでいたからだ。

しかし、こんなこと思ってる僕でも生まれて初めてのような気がする。学校の屋上へ行くのは。

「うん。私が前に行ってた学校は青空教室っていって、建物の外でしてたの。だから屋上もなかったんだ」

それって屋根すらないってことじゃん。雨とか雪とか台風の時、大変そう……。

そんな思いを抱くけれど、千春は何でもなさそうにあっけらかんとしている。その姿に少しの違和感を覚えた。

「それにしても、夢にしては小さすぎないか?」

なんか変だぞ、と言いたげな顔をして赤木が問いかける。

確かにもっと欲張ったっていい。物足りなさすぎることが言葉の端々から感じる。

例えば将来は陸上選手になってそのまま、世界一週マラソンがしたいとか。ま、達成する前に体力が尽きて足がもう限界、と悲鳴をあげるだろうが。いや、下手すりゃ疲労骨折かも。どちらにしても、この例えは壮大すぎたか。

自分で自分に反省すると同時に、苦笑が洩れそうになる。不快に思われると厄介なので、寸前で呑み込んだ。

「いいじゃないの。現実的で。早く行こ」

双葉はそう言って弁当を小脇に抱え、千春の手を引く。それから先陣を切るように、教室を飛び出していった。

「さすが蕾。思いたったらすぐ行動だな。俺達も行こうぜ」

「おう」
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