あの夏空の下、君と生きた七日間。
赤木の後を追うようにして、4階建て校舎の中央にある階段を一気に駆け上がる。

ついさっきまでいたのが3階だったので、目的の屋上はふたつ上ればすぐのところにあった。

入り口の鉄製の古びた扉を開ければ、夏の生ぬるい風が一直線に吹き込んでくる。どこか涼しげがあって、浴びていると心地よさを覚えた。

端には転落防止の柵が胸の高さまで取り付けられていて、そこに両肘を預けると、見慣れた街の景色を一望できた。

青色の絵の具を適当に塗りたくったような真っ青な空。

そこに浮かぶわたあめのような、ふわふわの雲。

そよ風に誘われるようにして、さわさわ揺れる木の葉達。

駅や住宅街を挟んで、網の目のように広がるいくつもの道。

その中には今朝寄った河川敷もあった。幅広い川は眩しい太陽に照りつけられて、気持ちよさそうにきらきらと輝きを放っている。

遠くから見ると川の流れは山の近くになるにつれ、急になっているのが目に見えてわかる。

「うわぁー、綺麗ー!!」

いかにも興奮した様子で、柵に身を乗り出しながら千春は叫んだ。その様はまるで生まれて初めて絶景を目にした子供のようだ。

しかし、この街並みには足りないものがひとつある。

「やっぱここからじゃ海は見えないね」
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