あの夏空の下、君と生きた七日間。
「あ、ああ。い、いつか見に行けるといいな」

口から洩れたその言葉に自分でもびっくりした。こんな胸打つようなセリフ、僕が言う柄じゃない。きっと緊張のあまり、調子が狂ってしまったのだろう。

そんなことも知らず千春はそっかー、と呑気に呟いていた。

「千春ちゃん、こっちこっちー。赤木達も」

近くのベンチに座りながら双葉が手招きをしてくる。

そのベンチはテーブルつきで、向かい合うようにもうひとつのベンチがあった。

「俺は双葉の前に座る。お前はまだ誘えてないんだろう?」

マネージャーの件。

わかりきったような口調で赤木は言う。

隣の席という、いつでも話しかけやすい場所にいるはずなのに。しかも、相手は顔見知りの千春のはずなのに。

いざ、バレー部のマネージャーを頼むとなると、どう言葉を扱えば適切か、わからなくなるんだ。そんなこんなで今に至る。もうこれ以上あとに引くわけにはいかない。

千春と向かい合うように座ると、周りに赤木や双葉がいても、胸の鼓動が速くなる。これがふたりきりだとしたら、爆発寸前になっていたのだろう。友人の力に感謝しながらも、それぐらい重苦しい緊張が、背中にはのしかかっていた。

「えっ、弁当に重箱!?そんなに食べれるの?」
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