あの夏空の下、君と生きた七日間。
なんの躊躇いもなく2段につまれた、重箱を開け出す赤木に千春が驚きの声を上げる。

確かに今時弁当に重箱を持ってくる人なんてめったにいない。

けれど、千春はアフリカから来たはずだ。自己紹介の時もそう言っていた。なんか変だな、と違和感を覚える。

「俺はバレー部だからな。食ってないと腹空くんだ」

重箱にはサイズが大きいだけあって、たくさんのご飯やおかずが身を寄せあうようにして、ぎつしり詰められていた。

それらはきつね色に焼かれた厚焼き卵やゆでたブロッコリーなどどれもおいしそう。

結構量もありそうだが、赤木は太ったりはしない。食べたら食べた分だけ。いや、それ以上バレーに熱を入れているのだから。

「それにしても白澄の弁当はまたおむすびふたつだけか?ダイエット中かよ」

牛肉で揚げられたらしい唐揚げを頬張りながら赤木は言った。その口調はどこか、心配してくれているよう。

ちなみにおむすびひとつの大きさは片手におさまるくらいだ。つまり、かなり小さいことになる。

「するわけねぇだろ。女子じゃねぇんだし」

素っ気なさのある声音で答えた。

すると赤木はだな、と納得しながらもまだ何か言いたげな顔を浮かべていた。

既に卒業していった先輩達からのいじめ。

今はもう自然消滅しているが、大失敗のトラウマが足を引っ張っていて、少ないままの食欲。
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