あの夏空の下、君と生きた七日間。
「私はね、優しいなって思うの」

僕の隣に腰かけながら彼女は言った。

なんで?

本当ならそう問いかけるべきだろう。実際、疑問にも思っている。とはいえ、初対面という関係に慣れてないのか、緊張して聞くに聞けなかった。

その代わりに「ふーん」と他人事のように呟く。きっと彼女と僕は正反対なんだろう。聞いたわけでもないのに容易に想像できた。

入学当時は優等生並みだった成績は、あることを機に低下傾向に当たっていて、ここ半年はどの教科も50点代をさ迷い続けている。

最初は期待されてた両親には呆れ返られ、勉強のやる気さえも失せてしまった。

その一方でスポーツは、走ることだけが唯一得意な方だ。他は全て苦手分野に属していて、同時に致命的に下手でもある。体育の授業の度にみんなの足を引っ張ってしまい、申し訳なさと罪悪感が込み上げてくるほどだ。

仲の良い友達も幼なじみ一人しかいないし、好きなことを充分にできているような人生ではない。

辺りには静寂な沈黙が漂っている。僕が興味のなさそうな返答をしてしまったからだろうか。今更ながらに後悔の波が押し寄せる。

「私、空野千春。君は?」

無言の時を唐突に破るように彼女・千春は自己紹介をしてきた。
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