あの夏空の下、君と生きた七日間。
物心ついたときから僕はこの言葉を何度、聞かされたであろう。

いつしか、母さんの口癖みたいなものになっていて、もう耳にタコだ。

生まれつき病弱な母さんは成績はよかったものの、幼い頃から病院の入退院を繰り返していた。

そのせいで出席日数が足りず、入学が許されなかった学校。それが心葉大学だ。

母さんはその大学にどうしても入りたかったらしい。

なぜなら、そこはバレー部が有名で県大会でも毎年のように優勝を獲り続けていた。いわゆる強豪校っていうヤツだ。

母さんはそのバレー部のマネージャーになり、間近でチームのサポートや応援をしたいと淡い夢を抱いていたんだそう。けれど病気のせいで叶わぬ夢となり、散り散りに破れてしまった。

それで一人息子の僕に託したわけなのだが、あいにく僕は男だ。その上、マネージャーなんてやる柄じゃない。また、母さんのように病弱でもない。つまり、バレーをやれるというわけだ。

ポジションはなぜか、ウイングスパイカー。理由を聞けば、コートで一番輝いて見える存在だから、といつも言う。それはセッターがいるからこそなのだけれど。

目指すは心葉大学バレー部のレギュラー入り。そして県大会での優勝を果たすこと。

最初は正直、母さんの夢を叶えてやると馬鹿みたいに意気込んでいた。だから街にあったバレースクールにすすんで通った。

しかし、そこで恥を知る。病弱でない代わりのように恵まれない身長や並外れた才能、ジャンプ力や判断力、チームを引っ張るリーダーシップなど、その全てが欠けていた。
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