泣きたい訳じゃない。
まだ、拓海の匂いがする枕を抱きしめて眠った翌日の朝、携帯にメッセージが届く。

『おはよう。起きてる?』

『うん。』

余りにも普通過ぎる。

『パソコン立ち上げて、昨日教えたアプリを開いて。』

『分かった。』

私は、まだ寝ぼけたままでパソコンの前に座り、拓海の言われた通りにする。

アプリを開くと、昨日別れた拓海がいた。

「近過ぎる。」

私は思わず呟いた。

「嫌なのかよ。莉奈、顔の浮腫が今日は一段と酷いな。それに寝癖も。」

昨日の夜、シャワーを浴びて髪を乾かす気力もなく、泣きながら眠ってしまったからだ。

「起きたばっかりだし。まさか、こんなに早くテレビ電話が繋がるなんて思ってなかったから。」

「サプライズのつもりだったんだけど、嬉しくないの?」

「嬉しい。ありがと。」

「莉奈の喜び方は分かり辛い。折角、莉奈の朝をずっと待ってたのに。」

「私の朝を拓海が待ってた。」
そう言われただけで、私の胸はキュンと鳴った。

「じゃあ、泣けばいい?」

「泣かなくていい。莉奈には笑ってて欲しいから。」

それならサプライズはもう止めて欲しい。
きっと、次は泣いてしまうから。

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