泣きたい訳じゃない。
オフィスに着くと、北村さんと下川さんが待っていてくれて、現地スタッフと共に歓迎してくれた。
皆んな楽しそうな人達で、私は一安心する。
アメリカは自己主張が激しい国ではあるけれど、その分、言いたいことが言い合える文化だ。

私には合っているかもしれない。

歓迎も程々に、仕事の引き継ぎを始めた。

仕事内容は日本からサポートをしていた事もあって、概要は把握出来ていて、細かい部分は谷山さんがマニュアルを作ってくれていたので、何とかなりそうだ。

一通りの説明を聞き終わると、夕方になっていた。

「渋谷さんなら安心だな。ホテルまで送るから、実戦は明日からにしよう。」

谷山さんがそう言って、私のキャリーを運んでくれる。

「ありがとうございます。じゃあ、お言葉に甘えて、今日はお先に失礼しますね。ホテルへはタクシーを使いますから。」

「いいよ、これぐらいはやらして。」

そう言うと、谷山さんは駐車場に向かったので、私は急いで追いかけた。

残っているメンバーが皆んな声を掛けてくれる。

「See you tomorrow,Rina!」

私は、それに応えながらオフィスを後にした。

送ってもらう車の中で、携帯に電源を入れると、
拓海からの着信履歴とメッセージが溢れていた。

昨日からずっと、連絡し続けてくれたみたいだ。
私は、日本のオフィスには社用メールで到着を知らせていたけど、プライベートの携帯の電源は入れていなかった。

ホテルに戻ったら、拓海に連絡をしなければ。
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