泣きたい訳じゃない。
いい加減な気持ちで彼女と付き合い、曖昧な態度を取り、結局、彼女を一番傷付けてしまったと後悔している。

だから、莉奈には泣いて欲しくなかった。

バンクーバーへの赴任が内示された時に、莉奈との結婚と別れの両方を考えた。

でも、このタイミングで「結婚」を言い出すのは、莉奈に究極の二択を突き付けるみたいで嫌だった。
それにもし断られたら、それは同時に莉奈との別れも意味することになる。

結局、どちらも言い出せないまま、俺はここへ来てしまった。

俺が莉奈を手離したくなかったから。

付き合い始めた頃は、莉奈と離れるのがこんなに辛くなるなんて思っていなかった。

「遠距離恋愛を楽しみたい。」と言ったのは、莉奈の優しい強がりだと知っている。でも、あんな泣き腫らした顔で言われたら、俺は莉奈を今すぐにでも抱き締めたくなるだけだ。

それが出来なくて、自分にイライラした。
俺は、自分勝手な上に、女々しい男だ。

初日からこれじゃあ、先が思いやられる。
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