好きになってもいいですか?
「ありがとうございました」

そう言い、くるみは笑う。写真でアートが見たあの無邪気な笑顔だ。まるで花が咲いたような可愛らしい笑顔。ドキッと一度高鳴った胸は止まることなく高鳴り続ける。

恋に落ちてしまったんだ、そうアートはすぐに気付いた。出会ってそれほど時間の経っていない人に、たった一度笑顔を見ただけで、アートは恋に落ちてしまった。

(この恋が実る確率はほぼゼロなのに……)

スクールポリスと生徒の恋など、許されるものなのだろうか。それに、くるみの周りにはかっこいい男子生徒など山ほどいる。

それでも、恋というこの感情をアートは捨てることができなかった。



運命というものは恐ろしく残酷なのだと、アートは身をもって教えられた。

マスコットキーホルダーの件が終わってから、くるみは少しずつアートに声をかけるようになり、顔を上げて笑顔も見せてくれるようになったからだ。そのたびにアートの胸は高鳴り、失恋した時の痛みを想像し、頭を悩ませている。
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