好きになってもいいですか?
「怖かった……」

そう言うくるみの頭をそっとアートは撫でる。初めて触れた髪は柔らかい。そして、片方の腕はいつの間にかくるみをしっかりと抱き締めていた。

「よく頑張ったな」

アートは抱き締めながら言う。くるみの体は思っていたよりもずっと華奢で、簡単に折れてしまいそうな細さだった。大切にしないと壊れてしまいそうで、アートはさらにくるみが愛おしくなる。

「アートさん、あのね……」

少し落ち着いたのか、くるみが涙を拭いながら顔を上げた。涙で目が赤くなって腫れている。でも、そんな顔すら好きな人の顔は愛しいのだ。

「ずっと私、ドキドキしているの。アートさんが私を助けてくれたから……」

好きになってもいいですか?

くるみに見つめられ、アートの頬が赤くなる。あと一歩でこの恋は実る。あと一歩で両想いなのだ。

「もちろん。俺はずっとくるみの気持ちを待っていたんだ」

アートがそう言うと、くるみはまたアートに顔を埋める。

抱き締め合う二人を見て、アリアは「ずっと前から両片想いでしょ」と苦笑しながら言った。
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