好きになってもいいですか？

くるみはアリアとアートが話している間、恥ずかしそうに俯いているだけで、アートやアリアが話しかけない限り、決して自分から口を開かない。日本人はこういう子が多いのか、とアートは思った。

そんなある日、アートが校内の見回りをしていると、廊下に何かが落ちていることに気付いた。落ちていたのは、可愛らしいハリネズミのマスコットキーホルダーだ。

「生徒の落とし物か……」

アートはキーホルダーを拾い、ポケットにしまう。学校の見回りでこうした落とし物を拾うのは珍しくない。ヘアゴムやボールペンといったものから、財布や家の鍵といった貴重品まで落ちていることがあるため、見回りは欠かせないのだ。

そうした落とし物は持ち主が現れるまで、アートのもとで預かることになっている。ヘアゴムなどは持ち主が現れないことが多いが、このマスコットキーホルダーはすぐに持ち主が声をかけてくれるだろう、そうアートは思いながら落とし物入れにマスコットキーホルダーを入れた。