好きになってもいいですか?
その日の放課後、アートはいつものように見回りをする。アートを見た生徒は「さようなら!」と笑顔で声をかけてくれるので、「気を付けて帰れよ〜」とアートも返す。その時、「あの……!」と小さく声をかけられた。

アートが振り向くと、くるみが俯きがちにアートに声をかけていた。くるみの耳は真っ赤に染まり、手が小刻みに震えていて、声はどこか上ずっている。とても緊張していることがアートに伝わってきた。

「どうした?何かあった?」

アートが優しく訊ねると、くるみは「マスコットキーホルダー、知りませんか?」と言った。

「ハリネズミの……」

くるみがそう言い、アートは「ああ、廊下に落ちていたやつかな」と見回りで拾ったマスコットキーホルダーのことを思い出す。

「落とし物は全部俺が預かってるんだ。くるみのものか確認してもらっていいかな?」

アートの言葉にくるみはコクリと頷く。そしてアートが歩き始めると、その後ろを鳥の雛のようについてきた。
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