訳アリなの、ごめんなさい
王太子殿下の誘いによって、お二人は夕食を取ることになり、もちろん私もそれを近くで陰ながら見守ることになった。

和やかに食事をされる風景を見て、少し安堵して、となりの支度部屋へと下がる。


「ご苦労様」

不意に背後から声をかけられて飛び上がる。叫び声は寸でのところで飲み込んだ。

危ない危ない。

振り向くと、少しすまなそうにブラッドが立っていて、苦笑する。

姿がないと思ったら、どうやら彼は裏のヤードを警備していたらしい。



「あなたも、お疲れ様」

見上げると、いつもの無表情に眉をわずかに上げた。

「妃殿下のご様子はどうだ?」

すこし声を潜めているせいか、いつもより顔が近くて、にわかに顔が熱くなる。

「慣れない異国の様子に、驚かれたり感心なされたり、少し寂しそうにされたり色々よ」

夕食までの時間を茶を飲んで、室内を案内したり、部屋から庭を眺めたり、祖国とこちらの風習の違いを簡単に話すなどして、ゆったりと過ごしていた。

今日は着日でお疲れもあるだろうとのことで予定を入れてはいないが、3日後にお2人の挙式が迫っている。

明日から怒涛の準備や挨拶回りが待っている。


「そうか、いらした時は随分お顔にお元気がないように思えたのだが、今はそうでも無さそうで安心した。」

ほっと息を吐く彼に私は首を傾ける。

「そうなの?」



「殿下に対しても少し硬さがあったから、殿下も最初、慌ててみえたと言うかなんというか、、、」

上手く表現が出来ないのだがと言い淀む彼に、わたしは頷く。


彼の言っている事には、なんとなく納得ができた。

わたしの勘が正しければ、その彼の感じている感覚は間違っていない。


「そうねぇ。うーん。もしかしたら少し困った事になるかもしれないわ」

額に指を当てる。考えるだけで頭痛がする。


「殿下があれほど舞い上がっているから、暴走しないといいのだけど、、、」


「もうなかなか暴走してると思うぞ」

しれっと言われて、苦笑して彼を見上げ、肩を竦める。

「私たち臣下にはね!妃殿下によ~」

その言葉を聞いた、ブラッドが眉を寄せた

「アーシャもヴィンと同じことをいうのだな?」
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