訳アリなの、ごめんなさい
ブラッドが、戻ってきたのは茶を飲み始めた頃だった。
彼は、よほどのことがないと前室までしか入れないため、私が前室まで出て話しをした。
「兄は?」
「お帰りいただいたよ。2人が乗る馬車だと気づいて、しばらくごねられたけど、もう大丈夫だ。」
安心させるように落ち着いた声で告げられ、ほっと肩から力が抜ける。
「ごめんなさい」
本来であれば殿下付きの騎士であるブラッドをこんな事で煩わせてはいけないのに、もう何度目になるだろうと考えると、本当に申し訳なくなる。
それなのに彼は首を横に振って、優しく笑った。
「アーシャは何も悪くない。だが少し対策が必要かもしれん。もしかしたら、少し不便になるかもしれないが」
「構わないわ」
キッパリと答える。彼等の迷惑にならないためなら、少しばかりの不自由など気にならない。
おそらく彼は、最初から私がそう言うだろうことは予測していただろうから
「分かった」
と、神妙に頷いて仕事に戻っていった。
「ねぇ、アーシャとブラッドってどういう関係なの?」
部屋に戻り、元のソファに腰掛けると、わくわくしたというか、、、キラキラとしたというか、とにかく興味深々な様子のセルーナ妃が身を乗り出してきた。
楽しそうですね。
「幼なじみなんです。」
短く答えれば
「あらぁ!そうなの?道理で気安いと思ったわ!」
「色々と気を使ってくれて、本当に助かっています。」
私の家庭事情を多少なり知っている彼のおかげで、随分と助けられてきた。
「でも、ただの幼なじみ?」
含むような言い方と共に、彼女の青い瞳がきらりと輝く。
本当にこの人も、鋭い方だ。
「元、婚約者です」
仕方なく白状する。
どうせ、どこかで知られていくのなら、彼女には自分の言葉で伝えておいた方が良いだろう。
「もと?どうして?」
案の定、彼女は不思議そうに首を傾けた。
この国でも、彼女の祖国でも婚約破棄なんてものはそう簡単に出来ることではない。
特にこの国では単なる口約束では済まされず、貴族院に届を出さなければならない。
遥か昔、王太子の結婚を巡って婚約していた、していないと、トラブルになった事が起因となっていると聞いた事があるが、遥か昔の話なので詳しいことは知らない。
互いの同意のサインが無いと婚約も破棄もできないのだから、私と彼の婚約破棄手続きがされたと言う事は、彼自身も同意したと言う事なのだ。
「家庭の事情、といいますか?家同士の話なので私はよくわかりません」
どう説明したらいいのか分からず、曖昧に答えると
「あらそうなの?もったいないわ~
彼独身よね?婚約者はいるの?」
不満そうに妃殿下は口を尖らせた。
「いない、とは聞いてますが?」
「あら!なら問題ないじゃない?」
ぴょんと跳ねるように背筋を伸ばした妃殿下は嬉しそうに声を上げる。
「は!?」
唐突な彼女の言葉に思わずぽかんと口を開けてしまった。
しかし妃殿下はそんな事には目もくれず、
「2人とも互いのことを思い合ってるのはこちらから見ていたら一目瞭然なのに!」
「そ、そんなことは!!」
「そんな事あります!絶対に!!」
ピシッと指を突きつけられて、思わず私はいきをのむ。
セルーナ様、お行儀が悪いです。
もし気持ちが通じていたとしても、無理なのだが、、、。理由を説明するには果てしなく時間がかかる上、自身の体調にも関わる、今ここでは話せない
それに、すべてを知ったら、このお優しい妃殿下でも私を軽蔑するかもしれない。
うーん、困った、、、
彼は、よほどのことがないと前室までしか入れないため、私が前室まで出て話しをした。
「兄は?」
「お帰りいただいたよ。2人が乗る馬車だと気づいて、しばらくごねられたけど、もう大丈夫だ。」
安心させるように落ち着いた声で告げられ、ほっと肩から力が抜ける。
「ごめんなさい」
本来であれば殿下付きの騎士であるブラッドをこんな事で煩わせてはいけないのに、もう何度目になるだろうと考えると、本当に申し訳なくなる。
それなのに彼は首を横に振って、優しく笑った。
「アーシャは何も悪くない。だが少し対策が必要かもしれん。もしかしたら、少し不便になるかもしれないが」
「構わないわ」
キッパリと答える。彼等の迷惑にならないためなら、少しばかりの不自由など気にならない。
おそらく彼は、最初から私がそう言うだろうことは予測していただろうから
「分かった」
と、神妙に頷いて仕事に戻っていった。
「ねぇ、アーシャとブラッドってどういう関係なの?」
部屋に戻り、元のソファに腰掛けると、わくわくしたというか、、、キラキラとしたというか、とにかく興味深々な様子のセルーナ妃が身を乗り出してきた。
楽しそうですね。
「幼なじみなんです。」
短く答えれば
「あらぁ!そうなの?道理で気安いと思ったわ!」
「色々と気を使ってくれて、本当に助かっています。」
私の家庭事情を多少なり知っている彼のおかげで、随分と助けられてきた。
「でも、ただの幼なじみ?」
含むような言い方と共に、彼女の青い瞳がきらりと輝く。
本当にこの人も、鋭い方だ。
「元、婚約者です」
仕方なく白状する。
どうせ、どこかで知られていくのなら、彼女には自分の言葉で伝えておいた方が良いだろう。
「もと?どうして?」
案の定、彼女は不思議そうに首を傾けた。
この国でも、彼女の祖国でも婚約破棄なんてものはそう簡単に出来ることではない。
特にこの国では単なる口約束では済まされず、貴族院に届を出さなければならない。
遥か昔、王太子の結婚を巡って婚約していた、していないと、トラブルになった事が起因となっていると聞いた事があるが、遥か昔の話なので詳しいことは知らない。
互いの同意のサインが無いと婚約も破棄もできないのだから、私と彼の婚約破棄手続きがされたと言う事は、彼自身も同意したと言う事なのだ。
「家庭の事情、といいますか?家同士の話なので私はよくわかりません」
どう説明したらいいのか分からず、曖昧に答えると
「あらそうなの?もったいないわ~
彼独身よね?婚約者はいるの?」
不満そうに妃殿下は口を尖らせた。
「いない、とは聞いてますが?」
「あら!なら問題ないじゃない?」
ぴょんと跳ねるように背筋を伸ばした妃殿下は嬉しそうに声を上げる。
「は!?」
唐突な彼女の言葉に思わずぽかんと口を開けてしまった。
しかし妃殿下はそんな事には目もくれず、
「2人とも互いのことを思い合ってるのはこちらから見ていたら一目瞭然なのに!」
「そ、そんなことは!!」
「そんな事あります!絶対に!!」
ピシッと指を突きつけられて、思わず私はいきをのむ。
セルーナ様、お行儀が悪いです。
もし気持ちが通じていたとしても、無理なのだが、、、。理由を説明するには果てしなく時間がかかる上、自身の体調にも関わる、今ここでは話せない
それに、すべてを知ったら、このお優しい妃殿下でも私を軽蔑するかもしれない。
うーん、困った、、、