訳アリなの、ごめんなさい
翌朝、出勤間近になって、顔を合わせた同僚の顔を見たヴィンは不覚にも一歩だけ後退った。
殺気がやばいのだ。
こんな気迫を彼から感じたのは戦場ぶりではないだろうか。
その時は彼と同様に武勲を挙げた自分にも、ただならぬ気迫があったからこそ気にはならなかったが。
平和な宿舎の朝の廊下で見るのはあまりにも害がありすぎる。
他の者も彼のただならぬ殺気を感じてか、遠巻きに見ている感じだ。
一体何があったのだろうか、と考えるが昨日は任務終了時から別行動であったため、彼の行動を知らない。宿舎に直帰していなかった事から実家の別邸でも訪ねたのだろうと思っていたのだが。
色々考えていると、ヴィンの顔を見て彼がピタリと止まる。その段になって彼が今自分の部屋から来たのではなく、外から戻った事を知る。
「おはよう。なんだ実家に泊まっていたのか?」
声をかけると、彼の金色を含んだ瞳がギラリと光り、一瞬にして、身体中の毛穴が泡立つ。
ヤベー、半端なくこえ~。
「いや、朝早く少し出かけていただけだ」
「へぇ~め、珍しいな、なんかあったのか?」
朝に弱い彼にしては珍しい行動だなぁと思うのと同時に、彼の目の下の隈を見とめる。
これは何かあったのだろう。そう考えてまず最初に浮かんだのは彼の元婚約者だ。
このところ彼女の周囲が不穏なのは、ヴィンも承知の上だが、王太子殿下の介入でなんとかなりそうな兆しが見えたのが昨日のことだ。
まさか一晩で自分の知らないところで何か起こったのでは。そうでなければ、普段朝などはぼんやりしていることが多いこの男が、人を殺さんばかりの殺気を振りまいているなんて事はないだろう。
軽い調子で聞いてみたのだが、しばらく彼がこちらの顔をじっと睨みつけ(多分本人は見ただけ)思案する。
そしてようやく口を開いたかと思えば
「結婚する事にした」
おおよそ、そんな報告をするには似つかわしくないほどのトーンで言われた言葉に、最初は幻聴なのかと戸惑う。
結婚?人を殺しそうな顔で、こいつ今結婚って言ったのか?
「えっと、おめでとうでいいのかな?ちなみに誰と?」
まさか変な縁談を押し付けられたのかと、頭をよぎるが
「アリシアだ」
その名前にほっと胸を撫で下ろす。
しかし彼が望んでいる相手であるのに、この様子はどうしたことか。
「良かったじゃないか!でもなんでそんな顔してんだよ」
そう聞けば、今度は目の前の彼の顔がみるみる曇っていく。
殺気、、、ではなく彼の後ろに何だがどんよりとしたした物が濃くなった、、、ような気がする。
「おそらく俺は彼女に嫌われる。でもこれしか方法が無いんだ」
彼が言葉を発した時には、それは一層濃くなって、、、
何でこんな悲壮感漂い出したんだよこいつ、、、。
ヴィンはただただ意味がわからず、親友の不安定な様子に困惑した。
殺気がやばいのだ。
こんな気迫を彼から感じたのは戦場ぶりではないだろうか。
その時は彼と同様に武勲を挙げた自分にも、ただならぬ気迫があったからこそ気にはならなかったが。
平和な宿舎の朝の廊下で見るのはあまりにも害がありすぎる。
他の者も彼のただならぬ殺気を感じてか、遠巻きに見ている感じだ。
一体何があったのだろうか、と考えるが昨日は任務終了時から別行動であったため、彼の行動を知らない。宿舎に直帰していなかった事から実家の別邸でも訪ねたのだろうと思っていたのだが。
色々考えていると、ヴィンの顔を見て彼がピタリと止まる。その段になって彼が今自分の部屋から来たのではなく、外から戻った事を知る。
「おはよう。なんだ実家に泊まっていたのか?」
声をかけると、彼の金色を含んだ瞳がギラリと光り、一瞬にして、身体中の毛穴が泡立つ。
ヤベー、半端なくこえ~。
「いや、朝早く少し出かけていただけだ」
「へぇ~め、珍しいな、なんかあったのか?」
朝に弱い彼にしては珍しい行動だなぁと思うのと同時に、彼の目の下の隈を見とめる。
これは何かあったのだろう。そう考えてまず最初に浮かんだのは彼の元婚約者だ。
このところ彼女の周囲が不穏なのは、ヴィンも承知の上だが、王太子殿下の介入でなんとかなりそうな兆しが見えたのが昨日のことだ。
まさか一晩で自分の知らないところで何か起こったのでは。そうでなければ、普段朝などはぼんやりしていることが多いこの男が、人を殺さんばかりの殺気を振りまいているなんて事はないだろう。
軽い調子で聞いてみたのだが、しばらく彼がこちらの顔をじっと睨みつけ(多分本人は見ただけ)思案する。
そしてようやく口を開いたかと思えば
「結婚する事にした」
おおよそ、そんな報告をするには似つかわしくないほどのトーンで言われた言葉に、最初は幻聴なのかと戸惑う。
結婚?人を殺しそうな顔で、こいつ今結婚って言ったのか?
「えっと、おめでとうでいいのかな?ちなみに誰と?」
まさか変な縁談を押し付けられたのかと、頭をよぎるが
「アリシアだ」
その名前にほっと胸を撫で下ろす。
しかし彼が望んでいる相手であるのに、この様子はどうしたことか。
「良かったじゃないか!でもなんでそんな顔してんだよ」
そう聞けば、今度は目の前の彼の顔がみるみる曇っていく。
殺気、、、ではなく彼の後ろに何だがどんよりとしたした物が濃くなった、、、ような気がする。
「おそらく俺は彼女に嫌われる。でもこれしか方法が無いんだ」
彼が言葉を発した時には、それは一層濃くなって、、、
何でこんな悲壮感漂い出したんだよこいつ、、、。
ヴィンはただただ意味がわからず、親友の不安定な様子に困惑した。