訳アリなの、ごめんなさい
馬車に揺られて帰宅したのは夜も遅くなってからだ。舞踏会はあれ以外、特に問題無く終了した。

エドガーは夫人と一緒に帰宅したため帰りの馬車は一人きりだった。

なんとなくリラックスして、少し疲れも出てうとうとと微睡んでいると、馬車が停まるのが分かった。


扉が開けられ、少し寝ぼけた頭で、いつもの正門では無いことに、首を傾げる。

「自分も行きます」

「だめだ、お前はここで2人を頼む」
「ですが」

何か揉めているのかと、馬車を降りながらそちらを見ると、殿下と騎士が数名集まって話をしている。

その中で一際声を上げているのがブラッドだと気付いて首を傾げる。



「俺は彼を追い払いに行くんだ、今にも殺しに行き兼ねんお前を連れてはいけない。騎士の本分を忘れるな」

珍しく王太子殿下の厳しい声が聞こえて


そこで何が起こっているのか、なんとなく理解してしまった。

彼が、来ているのだ。

ゆらりと後ずさる。ジャリっと軽石を踏みしめた音で、私を見とめた彼等があっと声を上げた。

もう一つの馬車から慌てて降りてきた妃殿下が、私の肩をそっと包んだ。

どうやら彼女も多少の事を聞いているらしい。申し訳ない気持ちになる。

「とにかく、お前は2人を連れて中で待っていろ」

突き放すようにブラッドにそういうと、殿下はヴィンと他の騎士を伴い、先に建物の中に入っていってしまった。
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