訳アリなの、ごめんなさい
それから数日、平穏に変わりなく日々は続いている。
「ところでブラッド、いつアーシャに求婚するんだ?」
それは、何気ない王太子殿下の一言から始まった。
聞かれたブラッドは、気まずげに宙を見上げた。
「それなんですが、拒否されました」
「なんだって?」
殿下とエドガーが驚きの表情で彼を見た。
だって結婚するってお前言ってたじゃん!と皆の顔に書いてある。しかし誰も言葉には出来なかった。
あの二人の様子で、結婚を断るって、そんな事があるのか?
脇で聞いているだけだったヴィンも正直驚いた。
実のところ、彼の結婚の話については、親友で寝食を共にしている身でも、怖くて触れられ無かったのだ。
あんな殺気だって「結婚する事にした」って言われた話題を根掘り葉掘り聞けるほど、ヴィンは命知らずではない。
「ですが、結婚はします。後見人のノードルフ卿からも私の家からも許可が出ておりますので」
しかし、彼の口から淡々と出た言葉に、その場にいた一同はさらに驚く事になる。
断られたのに、周りを固めて結婚する!?
おおよそこの、図体がでかいだけで根が優しい男がするような行動とは思えない、、、。
「まさかお前、、、無理やり」
なんとか口にできたのは、やはりその場で一番位の高い殿下で、それに対してブラッドは、まさか!と首を振って否定をする。
「ちょっと色々上手く使えるものがありましてね。」
そう言って彼らしからぬ不敵な笑みを浮かべたのだ。
こえぇ~こいつ、怖すぎる。
初めてみる親友の一面に、ヴィンの背筋は凍った。
たしかに彼女に対しては、彼はずいぶんと心を砕いていたし、献身的だと思っていた。
振られて、ちょっと色々振り切れちゃったのかもしれない。いや、ちょっとじゃないかもしれないけど、、、。
「だが彼女の気持ちも聞いてやらねばならんだろう?」
思い止まらせるように殿下が、とても常識的な事を言った。
確かにそうだけど、あんたも人の事言えないけどな!とエドガー辺りが突っ込むかと思ったが、さすがの彼もブラッドの言動に唖然としていた。
「問題はそこなんですが、彼女は自分では私に何も与えられないと固辞するばかりで、自分の気持ちは言おうとしないのです。ですが、もし婚約破棄がなかったら間違いなくオレと結婚していたと言ってくれました」
別に無理やりではない!とブラッドは不満そうに眉を寄せる。
うーん、なんかよく分からない、複雑な話になってるぞ?と皆が眉を寄せた。
結局、アリシアはブラッドが好きなのか?どうなんだ?
その時、コンコンと殿下の執務室の扉を叩く音が響く。
「お邪魔だったかしら?」
ひょっこりと顔を出したのは妃殿下だった。
「いや、いいよ、どうぞ!どうかしたのかい?」
素早い動作で、殿下が戸口へ向かい、彼女の手を取ると、室内へ誘う。
殿下の顔はたまらなく嬉しそうである。
「この前お借りしていた本の続きをお借りしようと思って」
そう言って妃殿下はその細い腕で持つには見合わない分厚い本を差し出した。
「もう読んだのかい?難しくは無かった?」
驚いたように見た殿下に彼女は、首を振る。
「アーシャがわかりやすく解説してくれるからすぐ理解できるの」
「なるほど!それは心強いね」
妃殿下から本を受け取った殿下は、一緒に本棚に向かい、新しい物を出してきた。
我が国の成り立ちに関する本のようで、最近彼女は熱心に学んでいると聞く。
「家庭教師でもつけようか?」
そう聞いた殿下に
「お勉強の色が強くなると辟易してしまうから、アーシャと世間話でもするように読んでいく方が楽しく理解ができるわ」
彼女は、楽しそうに笑った。
最近の妃殿下と王太子殿下は、気安い友人のような関係になって来ている。
最初こそ堅かった妃殿下も今では自然な笑顔を見せてくれるようになったように思う。
これは、殿下の思いを遂げるのもそう長くはかからないかもしれない。そんな事を考えていたら、
「あ、そうだ」
不意に殿下が、何かを思いついたように声を上げた。
そして、自身の愛しい妃を見る。
「セルーナ少し手を貸してくれないかい?」
「なんでしょう?」
小首をかしげる妻に、彼はニマリと笑った。
「ところでブラッド、いつアーシャに求婚するんだ?」
それは、何気ない王太子殿下の一言から始まった。
聞かれたブラッドは、気まずげに宙を見上げた。
「それなんですが、拒否されました」
「なんだって?」
殿下とエドガーが驚きの表情で彼を見た。
だって結婚するってお前言ってたじゃん!と皆の顔に書いてある。しかし誰も言葉には出来なかった。
あの二人の様子で、結婚を断るって、そんな事があるのか?
脇で聞いているだけだったヴィンも正直驚いた。
実のところ、彼の結婚の話については、親友で寝食を共にしている身でも、怖くて触れられ無かったのだ。
あんな殺気だって「結婚する事にした」って言われた話題を根掘り葉掘り聞けるほど、ヴィンは命知らずではない。
「ですが、結婚はします。後見人のノードルフ卿からも私の家からも許可が出ておりますので」
しかし、彼の口から淡々と出た言葉に、その場にいた一同はさらに驚く事になる。
断られたのに、周りを固めて結婚する!?
おおよそこの、図体がでかいだけで根が優しい男がするような行動とは思えない、、、。
「まさかお前、、、無理やり」
なんとか口にできたのは、やはりその場で一番位の高い殿下で、それに対してブラッドは、まさか!と首を振って否定をする。
「ちょっと色々上手く使えるものがありましてね。」
そう言って彼らしからぬ不敵な笑みを浮かべたのだ。
こえぇ~こいつ、怖すぎる。
初めてみる親友の一面に、ヴィンの背筋は凍った。
たしかに彼女に対しては、彼はずいぶんと心を砕いていたし、献身的だと思っていた。
振られて、ちょっと色々振り切れちゃったのかもしれない。いや、ちょっとじゃないかもしれないけど、、、。
「だが彼女の気持ちも聞いてやらねばならんだろう?」
思い止まらせるように殿下が、とても常識的な事を言った。
確かにそうだけど、あんたも人の事言えないけどな!とエドガー辺りが突っ込むかと思ったが、さすがの彼もブラッドの言動に唖然としていた。
「問題はそこなんですが、彼女は自分では私に何も与えられないと固辞するばかりで、自分の気持ちは言おうとしないのです。ですが、もし婚約破棄がなかったら間違いなくオレと結婚していたと言ってくれました」
別に無理やりではない!とブラッドは不満そうに眉を寄せる。
うーん、なんかよく分からない、複雑な話になってるぞ?と皆が眉を寄せた。
結局、アリシアはブラッドが好きなのか?どうなんだ?
その時、コンコンと殿下の執務室の扉を叩く音が響く。
「お邪魔だったかしら?」
ひょっこりと顔を出したのは妃殿下だった。
「いや、いいよ、どうぞ!どうかしたのかい?」
素早い動作で、殿下が戸口へ向かい、彼女の手を取ると、室内へ誘う。
殿下の顔はたまらなく嬉しそうである。
「この前お借りしていた本の続きをお借りしようと思って」
そう言って妃殿下はその細い腕で持つには見合わない分厚い本を差し出した。
「もう読んだのかい?難しくは無かった?」
驚いたように見た殿下に彼女は、首を振る。
「アーシャがわかりやすく解説してくれるからすぐ理解できるの」
「なるほど!それは心強いね」
妃殿下から本を受け取った殿下は、一緒に本棚に向かい、新しい物を出してきた。
我が国の成り立ちに関する本のようで、最近彼女は熱心に学んでいると聞く。
「家庭教師でもつけようか?」
そう聞いた殿下に
「お勉強の色が強くなると辟易してしまうから、アーシャと世間話でもするように読んでいく方が楽しく理解ができるわ」
彼女は、楽しそうに笑った。
最近の妃殿下と王太子殿下は、気安い友人のような関係になって来ている。
最初こそ堅かった妃殿下も今では自然な笑顔を見せてくれるようになったように思う。
これは、殿下の思いを遂げるのもそう長くはかからないかもしれない。そんな事を考えていたら、
「あ、そうだ」
不意に殿下が、何かを思いついたように声を上げた。
そして、自身の愛しい妃を見る。
「セルーナ少し手を貸してくれないかい?」
「なんでしょう?」
小首をかしげる妻に、彼はニマリと笑った。