ありがとうを、君に
「浮気されちゃったのも悲しかったけど、どうして私が振られるの?悔しい!!」


そう言って隣で泣いている女の子を、この腕で今すぐにでも抱き締めてあげたかった。

もちろん、そんな勇気はどこにもない。

なんて声をかけたらいいのかもわからず、ただただ女の子の背中をそっと撫でた。

女の子が泣き止むまで、せめてこうしていよう。

下手なことはせず、隣で寄り添っていてあげよう。

今の俺にできることなんて、これくらいだった。


「ふふっ…泣いたり笑ったりごめんなさい、お兄さん。不思議な状況すぎておかしくって」


女の子はようやく笑った。

その笑顔はあまりに眩しく、雨上がりの虹を見た感動に近い物を感じた。


「本当だよ、君の感情は忙しいね」


女の子が泣き止んでホッとしたこともあり、俺も笑みが溢れた。


「ここのベンチはお兄さんの特等席ですか?先約って言ってたから」


「ああ、ここから眺める星はすごく綺麗で心が洗われるような気分になれるから好きなんだ」
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