ありがとうを、君に
「そろそろ帰ろうか、あまり遅くなりすぎない方がいいでしょ?」


楓人くんはそう言うと、ちょうど通ったタクシーを捕まえた。

楓人くんが先に乗り込むと、おいでと手招きしてきた。

私はされるがまま、流されるままに車内に乗り込んだ。


「ほら、胡桃の住所言って!」


「えっ…あ、えっと○○5-24です」


タクシーがゆっくり進み出した。

歩いても、20分かからない距離なのにタクシーで帰してくれるの…?


「胡桃、実はもう足にとっくに限界きてるんでしょ?」


コソッと楓人くんはそう言い、私に気を使ってくれていたようだった。

痛そうに見えたかな?たしかに、靴擦れしてて足はもうかなり限界だったけれど、なんでわかったんだろう。

そういう気遣いができるところも、大人だなぁ。


「…うん、ありがとう楓人くん」


にっこり笑う楓人くんは、昨日も今日も相変わらず優しかった。

誰にでもこんなに優しくて気配りのできる人なんだろうか。

< 39 / 86 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop