ありがとうを、君に

〜楓人 side〜

胡桃を家まで送り、タクシーの中で一人。俺は今、物思いにふけっている。

だいたい、なんだ今日の胡桃は可愛すぎるんじゃないか!?

仕事の疲れも吹っ飛ぶほど眩しい笑顔に癒された…。

昨日振られたばかりでまだ相当悲しいだろうに、俺の前であんなに笑顔で…彼女は女神に違いない。

ちなみにこの時、俺は既に胡桃の熱狂的ファンか?と言わんばかりに熱を上げていた。

いやいや違う、違うぞ。やましいことなんて考えていない。

膝にしがみつかれた時は本当にドキッとしまくりで、どうしようかと焦ったけれど。

タクシーの運転手さん、ナイスタイミングで揺れてくれて心の底からありがとうございます…!

俺の頭の中は、8割5分が胡桃で占領されている状態だった。

歯がゆいことに、この気持ちは胡桃にバレないように気をつけながら、ただの良い友人の範囲でしか行動できないのが惜しいところだ。

失恋したての傷心中の女の子の心に漬け込んで懐に入るような真似だけはしたくない。

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