ありがとうを、君に
腕には点滴が刺さっていて、倒れた拍子に頭を打ったのかズキズキと痛む。

病室には誰もいなくて、静かだった。

窓の外に目をやると、夕方になっていた。

およそ17時といったところだろう、夕焼けが嫌に赤く俺を照らしていた。


ガラッ


部屋の扉が開く音がして、そっちを見た。


「あぁ…良かった楓人!!目が覚めて本当に良かった…!」


泣きながら抱きついてくる母親。


「俺…また倒れたんだね、19歳の時みたいに」


そう、俺はこれが初めての失神ではないのだ。

19歳の時は、風呂場で失神した。

いつどんな時にどんな事をしているかなんて関係ない。

本当に、いきなり尋常ではない頭痛と共に倒れる。


「今度は目覚めないかも…って本当に心配で心配で…!」


母親はまだ泣いていた。

俺は自分が倒れたのになぜか他人事のように変に冷静だった。
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