ふたつの愛し方
なんで今、生温い雫が頬に流れたのかわからない。

気付いた時には、両目から溢れ出していた。


泣くなよ、こっち向いて。


俊也を見上げると、流れた雫を俊也の温かい指先が拭ってくれる。


「言わないままでいいのか?」


「……今は……まだこのままがいい」


「朱希がいいなら、もう何も訊かないし言わない。ただし……俺には何でも話せよ?」


「うん……ありがとう。英介は……私の事をどう想ってるのかな?」


どうなんだろうな、と苦笑いをした俊也は、アイツはそういう事を話さないし表情に出さないからな。

そうだよね……と頷く私の髪を弄りながら、


「俺と同じで朱希を、大切に想ってるのは間違いないと思う。いつか……英介に気持ちを言いたくなったら……言えよ?」


うん、と頷いて見上げた俊也の瞳からは、感情は読み取れない。

心配してくれてるのだけは伝わるから、英介と身体の関係があるとは……俊也でもまだ、言えない。
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