ふたつの愛し方
「お疲れ!助かったよ。しかも救命で内臓破裂のオペをしたんだって。流石、名コンビだな!」


医局に入ると、そこに居た医者たちの視線が私たちに降り注ぐ中、俊也がパソコン画面から視線を外して、そう言ってくれた。


「ああ、朱希が居たから出来た。通常、必要な器具を別の器具で、代替えしてくれたおかげだ」


「そんなことないよ。それをちゃんと使いこなしてくれたのは、英介の腕だよ!」


本当にすごかったですよ、と一番近くで私たちを見ていた五十嵐先生が、会話に入ってきて、そんな事を言ってくれるから思わず英介を見上げると、柔らかく微笑んでくれた。


他の医者も、二人が居れば難易度の高いオペも出来ますよね。


それが余計に、英介の大望を聴いたばかりだから、英介に更に迷いが生じないか不安になったけれど、見上げた先の英介は気にしてない様子で、、、


「俊也が居るだろ。俺と同じくらい優秀な腕だ。それにオペ看は佐々木が居る。朱希が指導してくれてるから、着実に腕を上げてる」


「英介……あんまり煽てるな」


ケラケラと嬉しそうに笑う俊也は、やっぱり英介と一緒に外科医として歩きたいんだね。

きっと、それは英介も同じ。

当然、私も二人と医療現場に立ちたいのは同じ。


よくよく、英介が言った事の意味を解釈してみると…ーー、

俺が何年か居なくても俊也が居れば大丈夫って。

私が居なくても佐々木さんが居るから大丈夫って、伝えているみたい。


「中村さんはもっと、その腕を生かすべきですよ!勿体ないです!」


唐突なー…五十嵐先生の言葉は素直に嬉しいから、ありがとうございます、と。

大きく田中先生も頷いてくれている。


「五十嵐も、そう言うなら朱希のこれからは考えておくよ」


やんわりと交わしてくれた英介に対して俊也は、権限は英介にあるからな。


もし、英介が私を連れて病院を何年か離れても…ー…勝手だなって言いながら笑顔で送り出して、美和に支えてもらいながら病院を守ってくれるんだろうね。

必ず戻って来いって。
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