ふたつの愛し方
それから数ヶ月後ーーー。

夜勤明けの俊也の部屋に、いつの間にか英介が名前で呼び始めた休みの美和と私、日勤だった英介と4人で集まっていた。


話の内容は、もちろん海外派遣医師と看護師として働く事を伝えるため。


数日前に、久しぶりに重なった休み。


「朱希……後悔しないか?」


「もちろん!英介の居る場所なら、何処へでも着いてく」


こんな会話をしていたから。



「俺と朱希は、海外派遣の医者と看護師として働くことにした」


はぁ?!と俊也の声が響いて、今なんて言ったの?と言った美和の声も、俊也の声に重なっていた。


「また……急なんだよ!俺に戻って来るまで病院を守れって事だろ?」


「そういうことだ。俊也なら大丈夫だろうし、朱希の代わりには佐々木が居る」


「電車事故の日、英介が言ったことは…こういうことか……」


あの日の言葉の真意を俊也は理解したらしく、迷ってたんだな、と。


「お前が勝手に決断して、押し付けてくるのは今に始まった事じゃない。行って来い!ただし、必ず朱希と二人で帰って来るんだぞ!」


思ってた通り、俊也ならそう言ってくれると信じてた。


二人で帰って来るよ、と。

英介は俊也の肩に手を伸ばして力強く叩いて、頼むな。



「朱希なら、どんな過酷な場所でも大丈夫そうだしね。英介くんも側に居るし。待ってるからね、俊也と二人で」


背中にそっと手を添えて、微笑んでくれた。

うん!帰って来る、俊也をよろしくって返すと、任せて。
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