ふたつの愛し方
Episode:17
《俊也》


英介と朱希が1年半ーーー、帰って来ては、また海外へと飛び回っている日々は過酷だと覚悟をしていた。

だけど、美和の献身的な支えと、医師免許を取った研修医が戻って来てくれて、想像していたよりも過酷ではなかった。



だが……3年前に俺を振った女が看護師として、戻って来たいと連絡があり…ー
ちょうど、産休の病棟看護師の穴を埋めるには丁度いい、と承諾した。


「俊也くん、久しぶり。北河先生は院長になったのに……どうして居ないの?」


「海外派遣医師として、今は病院を離れてる。だから俺が正式に戻って来るまで、院長代理だ」


「そうなのね。それよりもまだ好きな子を追いかけてるの?」


この女=立花 麻友には関係ないはずだけれど、いつの間にか俺と美和の仲は病院内に広まっていて……早かれ遅かれ、麻友の耳には入るだろうから、、、


「追いかけてないよ。今は彼女いるからな」


「彼女ね……ちゃんと好きなの?」


「好きだよって……なぜ訊く?」


「好きじゃなく言い寄られて付き合ってるなら私にも……もう一度、チャンスあるかなって思っただけ」


よく言うよ。

あの時、自分だけを見て欲しいって振ったくせに。

1年も付き合っていれば、少なからず情と多少の好きな気持ちはあった。

美和ほどではないが、献身的に尽くしてくれたいい女だったから。



「そうか。残念だが、もう一度はない。もしも……俺の彼女に何かしたら、産休の看護師が戻って来る前に……切り捨てる」


少し切なそうに笑って、変わったわね、と呟いて院長室を出て行った。


帰ったら、美和に話そう。

美和が不安にならないように。

傷つけないように。

もしもの時に守れるように。
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