ふたつの愛し方
「皆、こんにちは。俊也いる?」


パートさんに任せられる時間帯に、頼まれていた薬を持って病棟のナースステーションに立ち寄る。

今までは、パートさんにお願いしていたけれど今は私が俊也に会いたいから…触れたいから…自ら来るようになっていた。

パートさんには、高橋先生に会いたいだねって言われるけど、事実だから否定はしていないし、もう公認の仲だから気にもしていない。


「高橋先生なら医局だと思います。預かっておきますよ?」


「ありがとう。お願いします」


病棟の看護師さんに渡して、医局に寄ってみようとエレベーターに乗る手前でー…ー、、、そこそこの美人な看護師さんに捕まった。

一目でわかったよ!

彼女がこの前、俊也が話してくれた立花さんだって。

瞳が明白に嫉妬心、剥き出しだもの。


「俊也くんの彼女さん?」


「そうですけど何か?」


「俊也くんをどうやって落としたんですか?」


どうやって落としたのか、なんてわからないよ。

真っ向から気持ちをぶつけただけ。

攻略法でも聞きたいの?

だったら教えてあげる、、、何もしてないよって。

好きだよって言い続けただけって。


「そんなので……俊也くんが落とせるなんて有り得ない!」


有り得いって言われても……有り得たんだけど。

どう言ったら納得してくれる?

私は早く俊也に逢いたいのよ。

こうなったら……甘えちゃおっ!


「俊也に訊いて下さい。なぜ私に惚れたのかって」


丸投げしちゃった。

でも、私もわからないんだから……本人に確かめるのが手っ取り早いでしょ。

俊也なら答えてくれるんじゃない。


「……っ……わかりました」


それだけ言って、ナースステーションに向かって踵を返してくれた。

面倒だな……こういうの。

後悔するなら、振らなければよかったのに。

まあ……後悔先に立たずって謂うし、仕方ないか。

とりあえず今のことは、俊也には話さないとね。

今後、もし何かあった時に余計な負担と心配をかける。
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